新社会兵庫ナウ

私の主張(2021年10月27日号)

2021/10/27
神戸市の区役所窓口業務の民間委託について考える
 

 神戸市は、昨年9月に策定した「行財政改革方針2025」の中で、「いつでも、どこでも簡単に、行政サービス」を謳い、区役所改革方針として、①定型的業務から相談支援業務中心の体制への転換、②職員は地域との協働等、より付加価値の高い業務に注力、③手続きのデジタル化、非対面での相談等の推進、④市民の行動変容促進という4点をあげた。
 この4点の方針により、この10月1日から兵庫区役所と北神区役所の市民課・保険年金医療課業務の民間委託が始まった。業務委託の公募には2社が応じ、3月30日の審査会で委託先は株式会社パソナに決定され、労働組合には4月になって業務委託の内容やスケジュールについての説明がなされた。その業務量は、市民課・保険年金課業務の6割を見込んでいるということで、当然、職員の削減を伴うことになる。
〈市会での質問に市長は?〉
 この問題について、9月24日の神戸市会でつなぐ議員団の小林るみ子市会議員(新社会党)により次のような総括質疑が行われた。
【小林】先行実施している兵庫区役所と北神区役所では偽装請負対策として職場のレイアウトを変更し、業務の棲み分けを行っている。その中で、窓口では民間職員が受付、内容点検を市職員が、その後に民間職員が入力、その点検・決済を市職員が行うということで、書類が行ったり来たりで処理時間が増加し、待ち時間が長くなっていると聞いている。また、DV問題等、個人情報の保護・管理にも問題が生じる恐れがある。防災体制についても、職員の減員によって必要な対応ができなくなる。コロナ禍でもあり、試行期間を延ばすべきでは。
【市長】業務委託後は、業者から月次報告を出させ、提案水準を満たしていない場合は改善を求め、試行実施の中で課題を解決し、必要な点検を行い、本格実施は市民サービスに影響の出ないようにしたい。
【小林】保険年金医療課の業務は、法制度がたびたび変わり、その上プライバシーの宝庫と言われるぐらいの大変な部署だ。そのような市民と接する一番大事な部署の窓口業務を軽視しているのではないか。
【市長】行政サービス水準を向上させたいということからこの委託を実施することにしている。
【小林】すでに民間委託されている他の自治体では、職員の窓口対応のスキルが低下して、民間職員からの複雑な事案についての問い合わせに、明確な回答が出来なくなっているという。これは、職員のスキルだけでなく、モチベーションの低下にもつながるのではないか。
【市長】区役所の中だけで物を考えるべきでなく、複雑な窓口業務は本庁との連携で対応すべき。マニュアルで提携した業務は職員でなくてもでき、民間委託で市民サービスを向上させるのが業務委託の方向だ。
【小林】民間委託は、結果として市民サービスの低下、職員の労働条件切り下げにつながる。試行期間を延ばし、検証・整理すべき。世界規模で再公営化が叫ばれる中、安易に民間委託を進めるべきでない。
〈労働組合・市民無視の現市政〉
 神戸市ではすでに、今回の市民課・保険年金医療課業務に先だち、税金部門が2019年9月から、県の税務事務所と併せて新長田合同庁舎に一元化され、区役所は証明発行窓口だけになっている。これまでは人員削減を伴う業務変更は労働組合と協議されていたが、2018年の「ヤミ専従問題」以降、組合費のチェックオフの廃止をはじめ、重要な業務変更についても、管理運営事項として全く応じなくなっている。今回の民間委託についても、スケジュールも、その業務内容についても、事前に職場の声を聞かず一方的に説明するのみで、区役所の窓口業務の多くを民間業者がやることについてほとんどの市民には知らされていない。「デジタル化」「非対応での窓口相談」といっても、ピンとこない市民が多いのではないか。逆に、窓口応対をしたことがない者がこのような提案を考えたのではと思う。
 すでに、神戸市長選挙は終盤になっているが、少しでも神戸市行政の現状や問題についてまわりの知り合いに伝えていきたい。また、来る2023年の市会議員選挙に向けた取り組みにも繋げていきたい。
 山田誠一(元神戸市職員)