新社会兵庫ナウ

地域ユニオンあちこちあれこれ 378

2021/10/13
労働基準監督署の指導のあり方が問題
 
 新開地にあるラブホテルのフロントとして働いていた女性2人が相談に来た。1日24時間働き、日給1万7千円。面接では「客が来ないときは何をしていてもいい」と言われたが、働き始めると監視カメラがあり、お茶を飲んでもオーナー一族から電話がある。そのため、24時間休憩することなく働かされていて、未払い賃金が発生していた。
 今回は、労働基準監督署の指導のあり方について問題提起する。未払い賃金の時効はこれまでは2年だったが、昨年4月1日以降からは3年(法改正は5年であるが、当分は3年)遡ることになっている。労働者は監督署に申告すれば、2年遡って指導されると思うが、実際は違った。監督官は、会社からタイムカード等労働時間がわかる資料を取り寄せ、勤続1年半について計算した。計算の結果、未払い額は110万円になった。監督官は会社に計算表を提示したらしいが、組合員には「会社は支払い能力ないよ」「全額ほしいっていうことではないんでしょう」「監督官を24年やっているが、全額払わせたのは2回しかない」と、全額支払われることはないと言い切った。そして、会社から振り込まれた金額は3カ月分だけで、会社の文書には「監督署からの指導が3ヵ月だった」と書かれていた。
 神戸西労働基準監督署と話をすると、「1年半で指導した」「会社が勝手に3ヵ月と言っているだけ」と弁明したが、「是正指導書」の開示は拒まれ、指導した証明はない。会社が3ヵ月分だけしか支払ってないことを知りながら、監督官は1年半払えと指導はしてなかった。監督署には引き続き指導を求めたが、監督官が3ヵ月だけ指導することは、今回だけではない。社会保険労務士のホームページには「相場は3ヵ月」と堂々と記載している。
 コロナ禍での経営不振で未払い賃金は増え、10月1日から最低賃金が上がるため、さらに監督署への相談や申告は増えるだろう。労働行政は、労働者のセーフティネットであるべきだが、その役割を果たしてない。これでは、時効が延長されても意味がない。一方で、未払い賃金は貯金ではない。労働者も時効云々ではなく、すみやかに請求することが必要である。
木村文貴子(神戸ワーカーズユニオン書記長)