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私の主張(2021年8月10日号)
2021/08/10
兵庫県知事選
維新の県内での伸長顕著
警戒すべき今後の県政
7月18日に投開票された兵庫県知事選挙は、自民党と日本維新の会が推薦する元大阪府財政課長の斎藤元彦氏が当選した。立憲民主党、国民民主党、社会民主党、新社会党と自民党の一部県会議員が応援した前副知事の金沢和夫氏は次点となった。報道も投票終了直後、開票箱が開票場に運ばれる前に当確を打つなど、25万票を超える大差がついた。
今回の知事選は、県会与党の自民党県議団が割れて別々の候補を応援する異例の事態から始まった。しかも、西村経済再生担当相や二階自民党幹事長など菅政権の中枢が兵庫県選出国会議員を動かし、斎藤氏を強引に自民党推薦にしたと言われている。その斎藤氏を独自候補の擁立を見合わせた日本維新の会がいち早く推薦し、井戸前知事の後継である金沢氏は自民党県議団の多数派が支援した。
こうした事態の中、金沢氏は「県民党」を標榜し、連合や自治労、部落解放同盟などが推薦。さらに「維新県政をつくらせない」「中央支配を許さない県政をつくる」との立場で、立憲民主党、国民民主党、社会民主党のほか、「連帯兵庫みなせん」などの市民グループが金沢氏の応援を表明。結果として与野党対決の構図ができ上がった。
新社会党兵庫県本部も6月25日、総支部・支部代表者会議を開き、「自民『菅政権』・維新の県政支配を許さず、地方自治を守り、民主主義県政を進める」立場から金沢氏を支援することを決定した。
選挙戦序盤戦は、斎藤陣営に二階幹事長をはじめ自民党有力国会議員が続々応援に駆け付けた。ところが、都議選での自民党の敗北を受けて、終盤戦は吉村大阪府知事や松井大阪市長が度々応援に入るなど日本維新の会が前面に出る作戦をとった。一方、金沢陣営は、自民党本部の締め付けで自民党県会議員団の動きは鈍く、立憲民主党や国民民主党が前面にでて、連合、解放同盟、県OBや関連団体、商店街振興組合など地域団体が応援する選挙になった。
神戸新聞の出口調査による投票行動をみると、自民支持層では斎藤氏に48%、金沢氏に39・8%が投票。維新支持層では81・8%が斎藤氏に投票。立憲支持層では56・6%が金澤氏に、斎藤氏には24・2%が投票した。自主投票を決めた公明支持層では47・1%が金沢氏、40・3%が斎藤氏に投票した。また、無党派層では斎藤氏、金沢氏はそれぞれ約40%で分けた。
政党支持率では、自民が33%、維新が17%、立憲5%、公明5%、共産5%、支持政党なしが25%である。特に、維新17%は驚くべき数字で、神戸市や阪神間の都市部では自民党に肉薄する支持率を得ている。結果、維新支持層の8割の投票が斎藤氏当選を決定づける結果となったと言えよう。
この結果を受けて、斎藤氏は維新との政策合意であった知事退職金5割、給与3割減、公用車にセンチュリーは使用しないとの「身を削る改革」を早速明らかにした。また、吉村大阪府知事は「身を切る改革を最初にやると宣言された。維新が改革として進めるようなことは、どんどん後押ししていくことになると思う」「成長戦略には兵庫との連携を考えながら取り組む」と維新の公認候補が当選したようなはしゃぎぶりだ。自民党が「ひさしを貸して母屋を取られる」結果となった。
一方、井戸県政への評価は3分の2が肯定的で意外に高かった。しかし、肯定派でも後継の金沢氏より斎藤氏への投票が多く、「若さと刷新」を求める結果となった。
ただ、激戦となった知事選だが、投票率は41・10%と前回並みで、投票総数は減少。さらに、斎藤氏の得票率は46・9%で、知事当選者で得票率が5割を下回ったのは初めてで、過去最低である。有権者全体から見れば、19%と2割を切る支持しかないことを忘れてはならない。
今後、先に行われた尼崎市議選や今回の知事選の結果を見ると、兵庫県下で維新の攻勢はさらに強まることが予想され、神戸市長選挙や尼崎市長選挙など首長選挙はもちろん、統一自治体選挙などでも対策が急務である。維新は「政治への不満・変化」を求める市民の受け皿になっているのは事実であり、単純に「自民党の別働隊」「新自由主義政党」と切り捨てるのでなく、「どこがどう支持されているのか」「市民は何を求めているのか」を掴む努力が、私たちに求められている。
粟原富夫(新社会党兵庫県本部委員長)
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維新の県内での伸長顕著
警戒すべき今後の県政
7月18日に投開票された兵庫県知事選挙は、自民党と日本維新の会が推薦する元大阪府財政課長の斎藤元彦氏が当選した。立憲民主党、国民民主党、社会民主党、新社会党と自民党の一部県会議員が応援した前副知事の金沢和夫氏は次点となった。報道も投票終了直後、開票箱が開票場に運ばれる前に当確を打つなど、25万票を超える大差がついた。
今回の知事選は、県会与党の自民党県議団が割れて別々の候補を応援する異例の事態から始まった。しかも、西村経済再生担当相や二階自民党幹事長など菅政権の中枢が兵庫県選出国会議員を動かし、斎藤氏を強引に自民党推薦にしたと言われている。その斎藤氏を独自候補の擁立を見合わせた日本維新の会がいち早く推薦し、井戸前知事の後継である金沢氏は自民党県議団の多数派が支援した。
こうした事態の中、金沢氏は「県民党」を標榜し、連合や自治労、部落解放同盟などが推薦。さらに「維新県政をつくらせない」「中央支配を許さない県政をつくる」との立場で、立憲民主党、国民民主党、社会民主党のほか、「連帯兵庫みなせん」などの市民グループが金沢氏の応援を表明。結果として与野党対決の構図ができ上がった。
新社会党兵庫県本部も6月25日、総支部・支部代表者会議を開き、「自民『菅政権』・維新の県政支配を許さず、地方自治を守り、民主主義県政を進める」立場から金沢氏を支援することを決定した。
選挙戦序盤戦は、斎藤陣営に二階幹事長をはじめ自民党有力国会議員が続々応援に駆け付けた。ところが、都議選での自民党の敗北を受けて、終盤戦は吉村大阪府知事や松井大阪市長が度々応援に入るなど日本維新の会が前面に出る作戦をとった。一方、金沢陣営は、自民党本部の締め付けで自民党県会議員団の動きは鈍く、立憲民主党や国民民主党が前面にでて、連合、解放同盟、県OBや関連団体、商店街振興組合など地域団体が応援する選挙になった。
神戸新聞の出口調査による投票行動をみると、自民支持層では斎藤氏に48%、金沢氏に39・8%が投票。維新支持層では81・8%が斎藤氏に投票。立憲支持層では56・6%が金澤氏に、斎藤氏には24・2%が投票した。自主投票を決めた公明支持層では47・1%が金沢氏、40・3%が斎藤氏に投票した。また、無党派層では斎藤氏、金沢氏はそれぞれ約40%で分けた。
政党支持率では、自民が33%、維新が17%、立憲5%、公明5%、共産5%、支持政党なしが25%である。特に、維新17%は驚くべき数字で、神戸市や阪神間の都市部では自民党に肉薄する支持率を得ている。結果、維新支持層の8割の投票が斎藤氏当選を決定づける結果となったと言えよう。
この結果を受けて、斎藤氏は維新との政策合意であった知事退職金5割、給与3割減、公用車にセンチュリーは使用しないとの「身を削る改革」を早速明らかにした。また、吉村大阪府知事は「身を切る改革を最初にやると宣言された。維新が改革として進めるようなことは、どんどん後押ししていくことになると思う」「成長戦略には兵庫との連携を考えながら取り組む」と維新の公認候補が当選したようなはしゃぎぶりだ。自民党が「ひさしを貸して母屋を取られる」結果となった。
一方、井戸県政への評価は3分の2が肯定的で意外に高かった。しかし、肯定派でも後継の金沢氏より斎藤氏への投票が多く、「若さと刷新」を求める結果となった。
ただ、激戦となった知事選だが、投票率は41・10%と前回並みで、投票総数は減少。さらに、斎藤氏の得票率は46・9%で、知事当選者で得票率が5割を下回ったのは初めてで、過去最低である。有権者全体から見れば、19%と2割を切る支持しかないことを忘れてはならない。
今後、先に行われた尼崎市議選や今回の知事選の結果を見ると、兵庫県下で維新の攻勢はさらに強まることが予想され、神戸市長選挙や尼崎市長選挙など首長選挙はもちろん、統一自治体選挙などでも対策が急務である。維新は「政治への不満・変化」を求める市民の受け皿になっているのは事実であり、単純に「自民党の別働隊」「新自由主義政党」と切り捨てるのでなく、「どこがどう支持されているのか」「市民は何を求めているのか」を掴む努力が、私たちに求められている。
粟原富夫(新社会党兵庫県本部委員長)