新社会兵庫ナウ

おんなの目(2021年7月13日号)

2021/07/13
(この10年……)
 
 退職して今年で10年目になります。
 以前は、「100歳まで元気に生きて好きなことを何でもするわ」とよく言っていました。また、孫と動物園に行って一緒に走り回って、お母さんに間違えられたら、「いえいえ、おばあちゃんなんですよ」と言うのを楽しみにしていました。
 しかし、退職した年にリュウマチ症状が悪化し、右膝を手術することになりました。病院内を車椅子で移動した時に車椅子から見た景色、車椅子を押されていた自分、全身に響く地面からの振動を生涯忘れることができません。
 手術から10年、やっと日常生活を無理せずにやり過ごし、病気と付き合うコツらしきものを身に着けつつあります。もう走ることはできなくなり、お母さんに間違えられるという夢も叶いませんが、孫達の成長を身近で見ることができ、幸せと感じられるようになりました。
さて10年目を迎えていま、私が強く思うことは、やはり老後の生活についてのことです。65歳になった時、介護保険料が高くなり、少ない年金からごそっと引き落とされているのを見て、本当に腹が立ちました。介護保険制度はますます利用しにくくなっているのに、「少ない私の年金の中からこんなにもたくさん取っていくなんて!」と。
 リュウマチは新薬が開発され、以前に比べると症状を軽く抑えることができます。しかし、新薬は非常に高額です。自身の年金が取り敢えずあるので新薬の治療を続けることができていますが、費用がかさんで治療を諦める場合もあると聞いています。病気になるのは仕方ないことであるのに、経済的な理由で治療を受けることができない現実。病気になって初めて切実に感じました。
 またこのコロナ禍の中で、自己免疫抑制薬を服用している者としてコロナ感染を非常に恐れています。政府のコロナ対策は、PCR検査の遅れに始まり、全く信用できるものではないことを思い知らされました。感染してしまったら何の治療も受けることができずに、苦しむだけ苦しんで死んでしまうことを想像したとき、政府への怒りと共に、日本の現実をはっきりと見た気がしました。
 この現実に対して、何ができるのだろうかと考えても無力感で落ち込むことばかりでした。しかしいつも挫けず闘い続けている仲間に接すると、愚痴ばかり言わずに自分のできることをやるしかないと思い直すことができます。
 ぼちぼちでもやり続けるしかないですね。「世界によって自分が変えられることがないように」。(山田和子)