新社会兵庫ナウ

水脈2021年6月22日号)

2021/06/22
 6月7日、韓国の元徴用工らが日本製鉄や三菱重工業など「戦犯」企業16社を相手にした損害賠償の訴えを、ソウル中央地方法院(地裁)が却下した報道には少なからず驚かされた▼なぜか? 判決理由書は、1965年の日韓請求権協定で個人の請求権は消滅(裁判は起こせない)、この協定で韓国が受け取った外貨は「漢江(ハンガン)の奇跡」(輝かしい経済成長)に大きく寄与したとし、原告らの訴えを認めると(韓国の)文明国としての威信は地に墜ち、国際的に逆効果を招く。簡単にいうとこんな内容だった▼この判決に対してはさっそく青瓦台(大統領官邸)に、裁判官弾劾の国民請願が上がっている。「裁判官が個人の政治的動機をむきだし、請求権消滅論は日本の極右の立場そのもの」「憲法を遵守し、民族的良心を回復するためにも判事の弾劾を」というわけだ▼もう一つ驚いたのは2018年に韓国大法院(最高裁)は同趣旨の訴訟で、請求権協定にかかわらず不法な行為に対する個人の損害賠償を認める判決を出している。日本であれば当然、下級審は最高裁判例に従う。その常識からするとおかしな判決ではないか。ところでその請願、翌9日午後までの1日だけで賛同は22万人を超えたという。