相談の多くがあいまいな労働契約が問題
　コロナ禍の影響で、相談件数は増えた。コロナに関する問題だけでなく、関係がない相談も増えているように感じる。
　相談の半分以上が「労働契約があいまい」であることが問題になっている。
　労働基準法第15条では「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」と定めているが、明示されていない場合も多い。常時10人以上働く事業所では、就業規則を周知し、誰でも見ることができる場所に置いておくことになっているが、労働者も関心が薄く、読んでない場合がある。
　実際の相談では、Ａ社の場合、労働契約書はあったが、労働実態と記載事項が違っていた。会社から「便宜上」だと言われ、実態に合わせなかった。Ｂ社の場合、労働条件明示書もない。Ｃ社では、表記は「契約書」になっていたが、労働時間・休日・賃金締切日など、労働に関する記載はなく、「服務規程」だけが記載されていた。
　手こずるのは、「シフトによる」という記載だけで、いつ働くのかわからない場合がある。シフトはパターンが決まっていないため、店長の指示などで、曜日、始業・終業時刻、労働時間も好き勝手に組み込まれている。休業期間中はシフトを作成しないため、働くはずだった労働時間もわからない。一方で、労働者も「希望休」などを申請し、自由に働けることを希望している場合がある。そのことで、労使が「Ｗｉｎ−Ｗｉｎ」の関係を保っている。それが、新型コロナウイルスの感染拡大や大きな災害などで関係が崩れる。
　相談のほとんどは、「コロナが原因」ではない。「コロナによって浮き彫りにされた」問題だ。今回のようなコロナ禍でなくても、労働契約のあいまいさは、法律に違反し問題がある。ところが、社会的に平穏な状態のときには、問題にもせず、スルーされている。そして、慌てることになる。
　労働契約は適切に締結し、文書化し保存すること。給与明細はすべて保管すること。就業規則の保管場所を確認し、必ず読むこと。身を守るために、今からでも確認しよう。