新社会兵庫ナウ

おんなの目(2021年1月19日 合併号)

2021/01/24
菅政権の少子化対策 
 「アベ政治を許さない」……トップは変わっても、菅政権によりアベ政治は踏襲されている。アベ政権は、少子化を“国難”と位置付けたが、出生数は減少を続け、2019年の合計特殊出生率は、1・36人だった。菅政権は、少子化対策として不妊治療費の保険適用を打ち出したが、これが果たして少子化対策と言えるのだろうか。もっと根本的な課題・対策が必要なのではないだろうか。
 
「産めよ増やせよ」…菅政権の少子化対策
 この間、労働者の非正規化が進んでいる。低賃金で不安定雇用の非正規労働者は、すでに約4割を、公務職場でも3割を超える。「結婚もできない」「出産もできない」「ローンも組めない」「貯金もできない」若者世代が増えている。この根本的な課題を解決しない限り、少子化問題は解決しない。
 ましてや不妊治療費の保険適用を少子化対策と位置付けることに、戦前の「産めよ増やせよ」を思い起こしてしまうのは私だけではないだろう。
 不妊治療費の保険適用自体、決して反対するものではない。不妊治療は、身体的にも精神的にも、そして経済的にもリスクが大きい。せめて経済的なリスクを軽くすることができれば、当事者は身体的にも精神的にもずいぶんと助かる。不妊治療はそれだけデリケートな問題だ。
 
「産めよ増やせよ」…事実婚も対象に
 不妊治療費の保険適用の話が出される中、厚生労働大臣の「事実婚も対象に」との軽い(と、私には思えたが)発言に驚いた。数年前、神戸市内在住のA夫妻から、「不妊治療を受けたいが、事実婚は認めてくれない」という相談を受けた。「子どもが欲しい」という気持ちは、事実婚であろうが法律婚であろうが変わりない。私たちは、神戸市当局にかけあった。その折、神戸市の女性職員の「事実婚は不安定でしょ」の一言に耳を疑った。その後、新年度の『神戸市 不妊に悩む方への特定治療費助成のご案内』に突然、「法律上の婚姻をしている夫婦であること」の文言が付け加えられた。私たちのやったことがヤブヘビに。結局、諦めたA夫妻は、今は四国の実家に帰って農業を営んでいる。
 私は、それ以降もことあるごとに事実婚問題を取り上げ続けている。今回の厚生労働大臣の発言に「ようやく一歩前進」とA夫妻からメールがあった。事実婚も当然対象になるべきものだと思うが、これもまた率直に喜べないものがあり、根底にはやはり「産めよ増やせよ」という安易な発想があるように思えてならない。
 時を同じくして、「選択的夫婦別姓制度の早期実現を要請する意見書」の陳情が出された。国や自治体に、多様な生き方を受け入れる社会に向けて真の理解を求めていきたい。(神戸市会議員 小林るみ子)