改憲の動きをウオッチング

2020年12月8日号

2020/12/16
■衆院憲法審 国民投票法改定案継続審議に
 衆院憲法審査会は11月19日、菅政権発足後初めての実質的な改憲論議を行った。7回にわたる国会において継続審議となっている国民投票法改定案をめぐって意見が交わされた。
 各党の主な主張を新聞などから拾ってみる。
 与党―「共通投票所」の設置を認めるなど7項目を見直す国民投票法改正案について、野党にも異論はないはず。速やかな採決に理解を求めた。
 立憲―国民投票運動の期間中に放送されるテレビCMなどの規制も並行して議論すべきだ。7項目だけ先に(改正する)というのは理屈に合わない。
 共産―そもそも審査会を開くべきではない。憲法で保障された基本的人権を蹂躙する政治を正し、現実に生かすための憲法議論こそ必要だ。
 国民―CMやネット広告の規制、外国人の寄付規制など必要な議論の場を確保し、必要な改正が行われるなら、7項目の先行採決に応じる。
 なお、立憲民主党は、旧国民民主党との合流を踏まえ、新たな「憲法論議の指針」を決定。基本姿勢として「日本国憲法を一切改定しないという立場は採らない」と明記し、「立憲主義に基づき権力を制約し、国民の権利拡大に寄与するのであれば、真に必要な改定を積極的に議論、検討する」(時事)などとしている。
 11月26日の憲法審では、改定案に対する実質審議を行ったが、採決は見送られ継続審議となった。

■軍民両用研究押しつけ
 日本学術会議の原点否定につながる井上担当相発言
 井上科学技術担当相は11月17日、参院内閣委員会で、軍民両用(デュアル・ユース)技術の研究について、「時代の変化に合わせて冷静に考えていかないといけない課題だ」(東京)と述べた。この発言は、軍事研究を否定している日本学術会議に、方針転換を強要するものだ。
 日本学術会議は、科学者が戦争遂行のため軍事研究に総動員された、戦前の歴史への厳しい反省を踏まえ、1949年に設立され、翌50年と67年に「戦争を目的とする科学研究は絶対にこれを行わない」旨の声明を発し、2017年にも「2つの声明を継承する」との声明を出した。日本学術会議の原点はここにある。
 17年の声明は、政府が大学の補助金を削る一方で、「兵器などの開発につながる研究に多額の資金を支給し、管理する制度を広げていた」(朝日)時にまとめられたもの。防衛省は軍民両用の積極的活用のため「安全保障技術研究推進制度」を15年度に創設している。
 声明は軍民両用について、「研究成果は、時に科学者の意図を離れて軍事目的に転用され、攻撃的な目的のためにも使用されうるため、まずは研究の入り口で研究資金の出所に関する慎重な判断が求められる」としている。
 井上担当相発言は、人事介入によって日本学術会議をゆさぶり、政権の意に沿う組織に変質させ、科学者を再び軍事研究に動員することを狙ったものだ。 (中)