改憲の動きをウオッチング

2020年11月10日号

2020/11/15
■菅・自民党政権 「改憲原案起草委」設置 年内に条文案策定
 菅首相は、自民党総裁選の公約で「安倍政治を継承し、発展させる」「憲法改正に挑戦する」と明言し、安倍前首相の野望を引き継いでいる。
 日本学術会議が推薦した6教授の任命拒否の理由に憲法15条を持ち出して首相の任命権を過度に強調したり、野党の憲法にもとづく臨時国会開会要求を放置し、一方で違憲の「敵基地攻撃能力保有」の具体化をはかるなど、憲法軽視・破壊を際立たせている。
 さらに、初めての所信表明演説では、憲法審査会で「与野党の枠を超えて建設的な議論を行い、国民的な議論につなげていく」と強調し、改憲論議の加速をあらわにした。
 自民党の憲法改正推進本部(衛藤征士郎本部長)は、党内6派閥のトップを顧問に据えた(現閣僚の麻生氏は外した)。衛藤氏は「挙党体制で臨む」と決意を表明し、「憲法改正原案起草委員会」を立ちあげた。9条への自衛隊明記など改憲4項目について年内に具体的な条文をまとめるとしている。
 これに対し、立憲民主党の安住国対委員長は「改憲を急いで他党を無視するなら、国会で憲法論議はできなくなる」とけん制。自民党内からも改憲論議を先走ることに懸念の声が上がっている。

■菅政権下で本格化 「敵基地攻撃」兵器導入 来年度予算に盛り込む
 防衛省の2021年度の概算要求予算は5兆4898億円。過去最大を7年連続で更新した。「敵基地攻撃能力」に必要な兵器の導入が多数盛り込まれている。政府はこれまで「自衛のための必要最小限度」を超える攻撃的兵器の保有を禁じてきた。攻撃的兵器として攻撃型空母や長距離爆撃機、大陸間弾道ミサイル(ICBM)を挙げている。
  「空母」として改修を計画している護衛艦「いずも」と「かが」。「いずも」には米国製F35B最新鋭ステルス戦闘機(短距離離陸・垂直着陸)の搭載が想定されている。 ミサイル「JSM」はF35Aに搭載し、約500キロの遠距離から攻撃を可能とする。
 政府は空母に改修される「いずも」は「攻撃型空母には当たらない」と詭弁を弄している。最新鋭ステルス戦闘機を搭載する「いずも」は紛れもなく「攻撃型空母」だ。
 安倍前首相は退任直前、「敵基地攻撃」を念頭に新政権に議論を促し、「今年末までにあるべき方策を示す」よう指示した。菅首相は、安倍氏の実弟・岸信夫氏を防衛大臣に任命。「敵基地攻撃」を含む新たな安全保障政策を年末までに策定するよう指示した。 
 自民党は、言葉を変えて「相手領域内でも弾道ミサイル等を阻止する能力の保有」を提言。 政府は、年内にも「敵基地攻撃」を念頭に、国家安全保障戦略などを改定する方針である。
  「敵基地攻撃能力保有」は大軍拡への道であり、専守防衛を柱とする歴代政府の軍事政策の大転換である。違憲の「敵基地攻撃論」は断じて認められない。(中)