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私の主張(2020年9月22日号)
2020/09/29
コロナ禍で見えてきたこと
介護の分野をめぐって……
超高齢社会。高齢者・障がい者が老後を安心して暮らすためには、医療・介護・年金等の社会保障の充実が求められる。しかし、この間、社会保障は、徐々に改悪されてきており、“死ぬまで働かなければならない”ところまで追い詰められているのが現状だ。その上に、今回のコロナ禍のような緊急事態が生じると、即、脆弱な基盤の上に成り立っている介護等の分野でその影響が露わになる。
何もしていないのになんで慰労金を出すのか!
コロナ禍では、要介護高齢者や障がい者、持病のある人への感染リスクが高く、介護施設では介護クラスターが発生しやすい。しかも、食事や入浴等、要介護高齢者と介護職員は「3密」を避けることができない状況にある。そのような中、感染者が発生していなかったり、濃厚接触者に対応していない数多くの介護施設においても、マスク・消毒液・防護服などの感染予防の資材が不足し、「自分が感染するのではないか」「自分が感染させるのではないか」「自分が感染したら家族はどうなるのか」等、介護職員は、目に見えない恐怖に怯えながら感染予防の自助努力で介護業務を行ってきた。介護施設や介護職員は、要介護高齢者の身体機能の低下や認知症が進行しないよう、感染予防の中で献身的な努力を今なお続けている。
ところが、過日(7月)、兵庫県知事は定例記者会見で、医療・介護職員に支給される緊急包括支援交付金=慰労金をめぐって、コロナへの対応と関係のない医療・介護の職員にも5万円を支給するとした国の方針について、「国の慰労金事業の明確な取り扱いの実施要領が出るものと期待していたが、あまりにも明確ではない。われわれが対象を判断するが、説明がつかないような慰労金なら『何でもいいや』という話にはならない」との考え方を示し、さらに「国が言うように、何もしていないのに、なんで慰労金を出すのか。まったく説明がつかないような税金の使い方は兵庫県としてはやる気はない」と述べた。
前述のような介護の現場を把握・理解してさえおればこんな無責任な発言はなかったのではないか。介護職員の怒りが爆発した。
7月6日、「安心と笑顔の社会保障ネットワーク」は、兵庫県知事の発言と対応に納得できないことから、発言の撤回を求め、医療・介護を支えてきた全ての人に慰労金を支払うよう求める要望書を兵庫県に提出した。
医療崩壊が起きなかった要因の一つは介護施設での職員の踏ん張りにある
その後、国・神戸市は、福祉サービス事業所給付事業として、1事業所当たり20万円の給付金を使途を問わずに支給。応援職員を派遣する社会福祉施設等協力事業所に対しては人件費相当分を助成。要介護認定を受けられなかった人へは介護サービス利用料の助成。家族介護者が入院し、在宅での生活が困難になった高齢者・障がい者の一時受け入れ施設(しあわせの村)の設置。収入が減少した被保険者に係わる国民健康保険料・介護保険料の減免。介護施設へのガイドライン作成・配布等々……。それなりの対策が行われてきたが、一方では多くの課題も残された。そのひとつひとつを検証し、今後に備えていかなければならない。
平常時の課題でもある残された課題
残された課題として、密接を避けられない介護職員の仕事への理解と精神的ケアは言うまでもないが、医療施設が優先される中、介護施設ではマスク・消毒液・防護服の不足が生じたこと、介護施設における感染者の受け入れ先の病院・施設が十分ではなかったこと、低賃金で不安定な雇用形態が多くを占める介護職員不足が常態化していたことなどがあげられる。それでなくても、今回のコロナ禍で高齢の介護職員の退職者が出てくるのではないかと危惧している。
ある医師から「医療崩壊が起きなかった要因の一つは、介護施設での介護職員の“踏ん張り”があったからだ」というメッセージが介護職員に送られた。介護労働を真っ当に評価し、それに見合った賃金が保障されてこそ、介護職員は充足し、超高齢社会にも、今回のような緊急時にも対応できる介護体制ができるのだと思う。
小林るみ子(「安心と笑顔の社会保障ネットワーク」事務局長、神戸市会議員)
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超高齢社会。高齢者・障がい者が老後を安心して暮らすためには、医療・介護・年金等の社会保障の充実が求められる。しかし、この間、社会保障は、徐々に改悪されてきており、“死ぬまで働かなければならない”ところまで追い詰められているのが現状だ。その上に、今回のコロナ禍のような緊急事態が生じると、即、脆弱な基盤の上に成り立っている介護等の分野でその影響が露わになる。
何もしていないのになんで慰労金を出すのか!
コロナ禍では、要介護高齢者や障がい者、持病のある人への感染リスクが高く、介護施設では介護クラスターが発生しやすい。しかも、食事や入浴等、要介護高齢者と介護職員は「3密」を避けることができない状況にある。そのような中、感染者が発生していなかったり、濃厚接触者に対応していない数多くの介護施設においても、マスク・消毒液・防護服などの感染予防の資材が不足し、「自分が感染するのではないか」「自分が感染させるのではないか」「自分が感染したら家族はどうなるのか」等、介護職員は、目に見えない恐怖に怯えながら感染予防の自助努力で介護業務を行ってきた。介護施設や介護職員は、要介護高齢者の身体機能の低下や認知症が進行しないよう、感染予防の中で献身的な努力を今なお続けている。
ところが、過日(7月)、兵庫県知事は定例記者会見で、医療・介護職員に支給される緊急包括支援交付金=慰労金をめぐって、コロナへの対応と関係のない医療・介護の職員にも5万円を支給するとした国の方針について、「国の慰労金事業の明確な取り扱いの実施要領が出るものと期待していたが、あまりにも明確ではない。われわれが対象を判断するが、説明がつかないような慰労金なら『何でもいいや』という話にはならない」との考え方を示し、さらに「国が言うように、何もしていないのに、なんで慰労金を出すのか。まったく説明がつかないような税金の使い方は兵庫県としてはやる気はない」と述べた。
前述のような介護の現場を把握・理解してさえおればこんな無責任な発言はなかったのではないか。介護職員の怒りが爆発した。
7月6日、「安心と笑顔の社会保障ネットワーク」は、兵庫県知事の発言と対応に納得できないことから、発言の撤回を求め、医療・介護を支えてきた全ての人に慰労金を支払うよう求める要望書を兵庫県に提出した。
医療崩壊が起きなかった要因の一つは介護施設での職員の踏ん張りにある
その後、国・神戸市は、福祉サービス事業所給付事業として、1事業所当たり20万円の給付金を使途を問わずに支給。応援職員を派遣する社会福祉施設等協力事業所に対しては人件費相当分を助成。要介護認定を受けられなかった人へは介護サービス利用料の助成。家族介護者が入院し、在宅での生活が困難になった高齢者・障がい者の一時受け入れ施設(しあわせの村)の設置。収入が減少した被保険者に係わる国民健康保険料・介護保険料の減免。介護施設へのガイドライン作成・配布等々……。それなりの対策が行われてきたが、一方では多くの課題も残された。そのひとつひとつを検証し、今後に備えていかなければならない。
平常時の課題でもある残された課題
残された課題として、密接を避けられない介護職員の仕事への理解と精神的ケアは言うまでもないが、医療施設が優先される中、介護施設ではマスク・消毒液・防護服の不足が生じたこと、介護施設における感染者の受け入れ先の病院・施設が十分ではなかったこと、低賃金で不安定な雇用形態が多くを占める介護職員不足が常態化していたことなどがあげられる。それでなくても、今回のコロナ禍で高齢の介護職員の退職者が出てくるのではないかと危惧している。
ある医師から「医療崩壊が起きなかった要因の一つは、介護施設での介護職員の“踏ん張り”があったからだ」というメッセージが介護職員に送られた。介護労働を真っ当に評価し、それに見合った賃金が保障されてこそ、介護職員は充足し、超高齢社会にも、今回のような緊急時にも対応できる介護体制ができるのだと思う。