新社会兵庫ナウ

おんなの目(2026年1月21日号)
ウナイ=シスターフッド

2026/01/21
 昨年11月に参加した「PFASが子どもたちに与える影響」講演会のパネルディスカッションでのこと。多摩地区で活動される女性講師のTさんが、子どもさんと一緒に血液検査を受けた結果、子どもさんの数値が自分の値を超えていたのがショックで2週間結果を伝えられなかったと話された。結果を聞いたご長男は「今が一番高いから心配ないよ」と言われ、Tさんはそこからこの活動に入られたということだった。Tさんが話の途中で声を詰まらせた時、会場の参加者も皆、胸を詰まらせた気がした。少なくとも私には胸に迫るものがあった。ディスカッションの進行役のHさん(こちらも女性)も去年、自分が血液検査を受ける時、怖くて息子さんに受検を勧められなかったと告白された。
 そう、母親は子どもの健康に問題が起きれば心配でたまらなく、自分に責任を感じるのだ。去年公開された映画「ウナイ」の監督・平良いずみさんも、映画作りのきっかけは9年前、PFASが含まれた水道水で作ったミルクを生まれたばかりの息子さんに与えていたことがわかったときだと言う。「絶対、許さない」と思い、5年間、PFAS汚染を取材し記録してきた。PFAS汚染を追って沖縄から海外まで取材していくうちに平良監督は、世界の至る所で汚染問題の解決を求め立ち上がった女性たちに出会い、言葉の壁を越えて想いが通じ合う経験をしたそうだ。映画の題名になっている「ウナイ」とは、沖縄の言葉で姉妹、姉妹のように支え合い力を合わせて前に進む女性たちのことを指し、「シスターフッド」と置き換えることもできる。
 映画では沖縄の女性たちが9年前の水道水汚染発表以来、他のお母さんたちに知らせようと街頭で涙ながらに訴え、行政に調査や浄化を求め、ついには人権侵害として国連女性差別撤廃委員会でスピーチを行う姿が描かれている。
 また、ガンに侵され亡くなる直前までPFAS規制を訴え、州議会で証言をしたアメリカ・ミネソタ州のアマラさん(享年20歳)、その遺志をつぐ妹のノラさん(18歳)も登場する。また、イタリア・ヴェネト州で2013年、化学メーカー工場(2018年破産・閉鎖)による地下水汚染が発覚、子どもたちの血液検査結果を知った母親たちが「Mamme No Pfas」を結成し、勉強を重ね、科学者を巻き込んで客観的データを明らかにしてきたことも描かれている。
 こういった女性たちの立ち上がりでミネソタ州では2023年、アマラ法(2032年までにほとんどの製品へのPFAS使用を禁止させる)が成立し、ヴェネト州では去年6月、地方裁判所で元三菱商事関連会社の日本人3人を含む計11人に有罪判決が下され、市民や公的機関への損害賠償として約106億円の支払いが命じられた。
 日本では政府も自治体も、いまだにPFAS血中濃度と健康被害についての知見は確定しないとの一点張りで血液検査すらしない(吉備中央町を除いて)。河川や地下水の汚染源確定もなかなか進まない。そんな具合だけれど、日本の、世界のウナイたちの胸をつく想いと行動に連なっていたいと思う。
(川辺比呂子)