新社会兵庫ナウ

寄稿
住民の声を全く無視した「播磨臨海地域道路」計画
計画撤回へ5地区で住民が運動

2025/10/22
播磨臨海部に自動車専用道路建設計画
 第二神明道路・明石西ICから西へ広畑までの32㎞、播磨地方の臨海部に「播磨臨海地域道路」という名の自動車専用道路を建設する計画が着々と進行している。
 計画によれば、片側2車線、高架、有料で、2038年頃の開通を目指すという。国道2号線の姫路・加古川バイパス及び第二神明道路における交通渋滞を緩和し、臨海部の産業の流通を良くし経済発展を促すことが主たる理由だとしている。
 2001年にこの地域の行政・企業・財界が一体となって協議会を設立し、国への陳情と地元への広報を開始した。しかし、大規模開発優先の土建国家政策に対する国民の批判と計画キャンペーン上の不祥事が発覚して、長く休眠状態が続いていた。
 それがアベノミクスの大規模公共事業を推進する「国土強靭化」と「地方創生」の掛け声で計画が復活。兵庫県も関係市町も無批判にこれに便乗した。国土交通省は「優先区域絞り込み」手続き経て、2020年に近畿地方小委員会では複数のルート素案から「内陸・加古川ルート」が選定され、複数のルート案からの絞り込みは該当の市町に委ねられ、その結果が2023年に公表された。
住民の声を全く無視して計画を推進
 住民がこの道路計画を具体的に知ったのはこの23年の住民説明会が初めてであった。ルートに関わる企業にはルート選定過程で意見を聴取したようだが、住民側、ましてやルート線上にあって立ち退き対象となる住民には何の伺いもなかった。
 降って湧いたような計画の公表に、地元説明会の会場は疑問や質問、計画見直しや撤回の要望が噴出。しかし、住民の声は全く無視され、一考されることはない。計画を実行する上での手順を踏むために、住民説明会も公聴会も、市の都市計画審議会も着々とこなされていっているようである。
 当局は自動車道建設の目的と効果として、交通渋滞の緩和・交通事故対策と地域産業の活性化のほかに、内外の観光客の誘致や南海トラフ地震等の防災対策を挙げているが、いずれも取ってつけたような理由のようで、防災対策に至ってはむしろ逆で、軟弱地盤の兵庫南部沿岸は南海トラフ地震が発生すれば高架道路の倒壊は必至で、むしろ逆に混乱を招くことになることが予想される。
住宅密集地や中学校を切り裂くルート
 ルートを見てみると図のように、明石西ICから北に上がり、静かな田園の広がる稲美町を横切り、南下して加古川市別府町の住宅地を通る。その先、加古川の河口に新たに橋を架け、高砂市に入り中学校を縦断し、隣接の住宅密集地を切り裂き、松並木の美しい都市公園を全部潰し、工場の敷地は避けていびつにカーブして西へ。姫路市に入って的形地区で山にトンネルを穿ち、貴重生物の棲む里山を削るなど自然を破壊して姫路市広畑へと繋がる。
 高度成長期に造られた道路・橋・上下水道などのインフラの老朽化対策が急務の今、時代錯誤も甚だしい計画だと言わざるを得ない。
 建設費用は当初の5900億円からいまや1兆円を超えると思われる。こんな巨費を投じる、費用対効果などのない税金の無駄遣いの計画である。
 この計画に対し、ルート上の稲美、加古川、高砂、的形、姫路の5地区に道路計画に反対する住民の会が結成され、合同で計画の撤回を求め署名活動や街宣活動などが行われている。
(高砂市・島谷数博)