新社会兵庫ナウ

おんなの目(2025年10月22日号) 
酷暑 訪問介護員の悲鳴

2025/10/22
 この夏の猛暑は本当に酷いものでしたが、高齢者、障がい者の在宅介護を支える訪問介護員にとっても、本当に過酷なものでした。自転車や徒歩での移動に加え、利用者宅では感染予防のためマスク着用が必要でエアコンの効いていない台所での調理やトイレでの掃除、風呂場での入浴介助等、想像してみて下さい。
 「ケア社会をつくる会」で取り組んだヘルパーさんを対象にしたアンケートによると熱中症のような症状、だるさ、頭痛、めまいの他、嘔吐や意識障害等の報告もあった、とのこと。ヘルパーさん自身も高齢化している中で、今夏の暑さで退職を考えた人が3割あったのも頷けます。「利用者のため」と踏み止まっている60歳、70歳のヘルパーさんの使命感にこの国の在宅介護は頼っていてよいのでしょうか!?
 今年6月1日から施行された改正労働安全衛生規則では、労働者を雇用するすべての事業者に対して、職場の熱中症対策が罰則付きで義務化されました。けれど、小規模の訪問介護事業所では注意を促す程度で、対策はヘルパー個人に委ねられているのが現状です。せめて保冷剤や飲料等を支給すべきですが、昨年の訪問介護の介護報酬切り下げでより一層経営が厳しくなっており、それもかないません。介護保険の保険者である行政は支援する責任があります。
 そして昨年、私たち「安心と笑顔の社会保障ネットワーク」(略称・安心ネット)では地域ユニオンや熟年者ユニオンと連携して、介護保険に関するアンケートを持って、神戸市内の訪問介護事業所回りを行い、ヘルパー事業所の声を集め、神戸市や兵庫県に訴えてきました。
 特に垂水のユニオンではその後も2カ月に1回介護交流会を開き、実態の交流やメンタルケアの講習等を行ったり、その報告等を載せた交流紙を発行し、区内の事業所に配布を続けています。その活動の中で、明らかに廃業していると思われる事業所を見つけたり、神戸市への陳情や申し入れに感謝されたり、いろいろな情報が入ってくるようになりました。
 なかでも驚いたのは、病院や老健施設、デイケア等を運営している大きな法人が経営コンサルタント会社に乗っ取られ、介護や地域の高齢者の生活のことなどを考えず、経営の数字だけで判断され、訪問介護事業所を閉じることになり、サービス提供責任者が利用者やヘルパーさんの引き取り先を探す後始末をさせられている、という現実です。その前任者はメンタルを病んで退職された、とのことでした。
 また、神戸市内のある区では地域の介護の拠点、あんしんすこやかセンターのケアマネさんの過労自殺未遂があったそうです。
 私たち「安心ネット」11月1日に総会を開くとともに、ヘルパーさん、ケアマネさん、介護を経験されたご家族等の生の声を聞いて、話し合う場を企画しています。そして、これらの声を行政にぶつけていく予定です。ぜひ多くの方のご参加をお願いします。
菊地真千子(「安心ネット」代表)