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農業の再生と安心安全な「食」の確保を
2025/09/24
新米が出回ることで米価は落ち着くのではと期待されたが、予想に反してさらに高騰している。当分、米騒動は収まりそうにない。
それに加えて、先日の関税率引き上げをめぐる日米交渉では引上げ率を15%とすることで合意したが、「自動車など輸出産業を守る」ことを大義名分にして、その引き換えにアメリカ産のコメや大豆、トウモロコシ、ジャガイモなどの輸入拡大や5500億ドル(約81兆円)の対米融資を約束している。60年ほど前と同じことの繰り返しであり、国内農業を死に追いやる暴挙というほかない。
コメ不足を招いたのは、政府自民党が1960年代に、貿易自由化の名のもとに自動車などの輸出産業の育成強化を最優先し、これを下支えする産業の一つとして農業など第一次産業を位置付けたことに始まる。その具体化が、1961年の農業基本法の制定である。これを機に農家の経営規模の拡大や機械化が推奨される一方、71年からの減反政策によって米作から畑作などへの転換がすすむ。その過程で農村の働き手は外に職を求め、「三ちゃん農業」と称されたように兼業農家が一般化し、農山村の活力は次第に失われていった。
この国の「食」は量も質も危険水域にある
現在の自給率38%が政府の公式見解だが、これを額面通り受け止める関係者や団体は皆無と言っていいほどで、ほとんど信用されていない。政府統計ではコメの自給率は98%、鶏卵97%、大豆7%、小麦17%、牛肉38%だが、ここには、農業生産に欠かせない肥料や畜産飼料用の穀物類など大部分を輸入に頼っていることは計算に入っていない。鈴木宜弘・東大教授は、「実質的な自給率は10%」と断じ、世界各地で紛争が絶えないなか、「もし輸入が途絶すれば、この国の多くの人びとはたちまち飢餓に見舞われる」と指摘している。
自給率という「量」もたいへん危機的だが、食料の「質」の面でも懸念材料がいくつか指摘されている。なかでも遺伝子組み変え作物(GM作物)がアメリカから大量に輸入され、「ゲノム編集食品」が国内でも大量に生産されているが、これらのバイオ技術を駆使した作物や食品は、人体や生態系にどのような影響を与えるか、現段階で充分に解明されているとは言い難いのが実情だ。また、農薬で90年代から使用量が急増しているネオニコチノイド系の殺虫剤への懸念の声が強まっている。有機農業の実践者からは、「ハチをはじめ、ミミズもトンボもコオロギも川魚もありとあらゆる生き物が減り続けている。生態系が明らかに壊れかかっている」などといった報告が相次いでいる。
農家への所得補償を
一方、72年に、国際社会が初めて開発問題と環境保全について取り組み、その原則についてまとめた国連「人間環境宣言」(ストックホルム宣言)が採択される。国内では、これに感銘を受けた人びとによって有機農業の試みが始まる。化学肥料は一切使わず、自然との調和、生き物のいる村づくり、自給農業の推進、農民と消費者の連携などが追求されてきた。しかし、国や多くの自治体などがこれにソッポを向いたまま推移したこともあり、耕地面積における有機栽培面積は1%以下にとどまっている。
そうした中でも、食の安心安全を求める取り組みは各地で広がっている。千葉県木更津市では、市内農家にコメを有機栽培してもらい、学校給食に提供する地産地消の取り組みが注目されている。また、自然食品に関する情報提供や子ども食堂での有機農産物の提供など、多様な取り組みが全国各地で見られる。
「農」をめぐっては、自給率や食の安全性、大手食品産業による生産と流通、販売における寡占支配の弊害、備蓄米問題、そして高齢化したコメ農家の現状など、さまざまな問題が浮かび上がり、人びとの関心はかつてないほどの高まりを見せている。その中で急ぐべきは赤字続きと後継者不足に悩む農家への所得補償だ。いまも実質的に継続している減反政策を直ちにやめ、主食の米は有り余るほどの生産体制をつくるべきではないか。
緑豊かな景観はコメ作りで維持されてきた
「水源地としての森や生き物を尊ぶ心は米作の文化によって生まれた」。これは哲学者の梅原猛さんが遺した言葉だが、その典型が世界農業遺産に指定された宮崎県の高千穂郷・椎葉山にある。自然林の中に人工林が混在する山々を源として段々畑に水を張り、その下流には水路が張り巡らされ田畑を潤している。コメ作りは、きれいな水の供給を可能とする山や森、里山とそこに棲む生物と人びととの連携があって成り立つ。椎葉山と同じように緑豊かな景観を維持し、安心安全な農産物生産に励む地域は各地に点在する。互いにヨコにつなぎ、拡げる取り組みがこれまで以上に求められている。
鍋島浩一(兵庫県農業問題懇談会)
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それに加えて、先日の関税率引き上げをめぐる日米交渉では引上げ率を15%とすることで合意したが、「自動車など輸出産業を守る」ことを大義名分にして、その引き換えにアメリカ産のコメや大豆、トウモロコシ、ジャガイモなどの輸入拡大や5500億ドル(約81兆円)の対米融資を約束している。60年ほど前と同じことの繰り返しであり、国内農業を死に追いやる暴挙というほかない。
コメ不足を招いたのは、政府自民党が1960年代に、貿易自由化の名のもとに自動車などの輸出産業の育成強化を最優先し、これを下支えする産業の一つとして農業など第一次産業を位置付けたことに始まる。その具体化が、1961年の農業基本法の制定である。これを機に農家の経営規模の拡大や機械化が推奨される一方、71年からの減反政策によって米作から畑作などへの転換がすすむ。その過程で農村の働き手は外に職を求め、「三ちゃん農業」と称されたように兼業農家が一般化し、農山村の活力は次第に失われていった。
この国の「食」は量も質も危険水域にある
現在の自給率38%が政府の公式見解だが、これを額面通り受け止める関係者や団体は皆無と言っていいほどで、ほとんど信用されていない。政府統計ではコメの自給率は98%、鶏卵97%、大豆7%、小麦17%、牛肉38%だが、ここには、農業生産に欠かせない肥料や畜産飼料用の穀物類など大部分を輸入に頼っていることは計算に入っていない。鈴木宜弘・東大教授は、「実質的な自給率は10%」と断じ、世界各地で紛争が絶えないなか、「もし輸入が途絶すれば、この国の多くの人びとはたちまち飢餓に見舞われる」と指摘している。
自給率という「量」もたいへん危機的だが、食料の「質」の面でも懸念材料がいくつか指摘されている。なかでも遺伝子組み変え作物(GM作物)がアメリカから大量に輸入され、「ゲノム編集食品」が国内でも大量に生産されているが、これらのバイオ技術を駆使した作物や食品は、人体や生態系にどのような影響を与えるか、現段階で充分に解明されているとは言い難いのが実情だ。また、農薬で90年代から使用量が急増しているネオニコチノイド系の殺虫剤への懸念の声が強まっている。有機農業の実践者からは、「ハチをはじめ、ミミズもトンボもコオロギも川魚もありとあらゆる生き物が減り続けている。生態系が明らかに壊れかかっている」などといった報告が相次いでいる。
農家への所得補償を
一方、72年に、国際社会が初めて開発問題と環境保全について取り組み、その原則についてまとめた国連「人間環境宣言」(ストックホルム宣言)が採択される。国内では、これに感銘を受けた人びとによって有機農業の試みが始まる。化学肥料は一切使わず、自然との調和、生き物のいる村づくり、自給農業の推進、農民と消費者の連携などが追求されてきた。しかし、国や多くの自治体などがこれにソッポを向いたまま推移したこともあり、耕地面積における有機栽培面積は1%以下にとどまっている。
そうした中でも、食の安心安全を求める取り組みは各地で広がっている。千葉県木更津市では、市内農家にコメを有機栽培してもらい、学校給食に提供する地産地消の取り組みが注目されている。また、自然食品に関する情報提供や子ども食堂での有機農産物の提供など、多様な取り組みが全国各地で見られる。
「農」をめぐっては、自給率や食の安全性、大手食品産業による生産と流通、販売における寡占支配の弊害、備蓄米問題、そして高齢化したコメ農家の現状など、さまざまな問題が浮かび上がり、人びとの関心はかつてないほどの高まりを見せている。その中で急ぐべきは赤字続きと後継者不足に悩む農家への所得補償だ。いまも実質的に継続している減反政策を直ちにやめ、主食の米は有り余るほどの生産体制をつくるべきではないか。
緑豊かな景観はコメ作りで維持されてきた
「水源地としての森や生き物を尊ぶ心は米作の文化によって生まれた」。これは哲学者の梅原猛さんが遺した言葉だが、その典型が世界農業遺産に指定された宮崎県の高千穂郷・椎葉山にある。自然林の中に人工林が混在する山々を源として段々畑に水を張り、その下流には水路が張り巡らされ田畑を潤している。コメ作りは、きれいな水の供給を可能とする山や森、里山とそこに棲む生物と人びととの連携があって成り立つ。椎葉山と同じように緑豊かな景観を維持し、安心安全な農産物生産に励む地域は各地に点在する。互いにヨコにつなぎ、拡げる取り組みがこれまで以上に求められている。