新社会兵庫ナウ

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派遣労働者の処遇改善のたたかい

2025/08/13
 はりまユニオンに派遣労働者のOさんから相談があった。雇用契約書には「毎年昇給あり」となっているのに、3年間昇給はなかったということだった。
 OさんはH産業という派遣会社の正社員で、2022年9月から3社の派遣先を経験している。H産業は150人を超える派遣社員を抱えている。しかし、得意先と派遣社員のフォローに手が回らず、派遣元と派遣先の橋渡し役である営業担当も常に辞めていく状況で、その原因は、実質的に会社を仕切る営業部長の影響が大きく、風通しの悪い会社であることが交渉のたびに露呈した。交渉には訴訟を恐れてか常に3人の弁護士が同席し、ユニオンとの交渉に臨んできた。
 交渉の場で、Oさんが労基署に相談したやり取りの証拠を突き詰めても、会社に不利な内容だと営業部長はとぼけたりして交渉は前進しなかった。
 はりまユニオンでは執行委員会等で協議し、会社側は3人の弁護士をつけているため、物的証拠を出して交渉を有利に進めていくことを確認。そして、労基署に情報開示を求め、指導履歴等を提示させた。さらに、通信会社には通話履歴の開示を求め、相手側の「電話はなかった」との虚偽の答弁をくつがえした。
 当初、はりまユニオンをなめていたH産業と弁護士たちは民事訴訟さながらのやり取りにひるみだし、3回目の交渉から、事前に要求していた5%の賃上げ、昇給を認めるようになった。
 その後、Oさんは3社目の雇用契約が切れるタイミングで4社目へと派遣先がきまった。
 H産業は、はりまユニオンとの交渉を経験して、企業体質の改善がみられるようになった。社員の業務日報から問題点を共有するようになったり、全社員へのメールでフォロー体制を強化するなど、目に見える形で変化してきた。Oさんが一石を投じなければ変わらなかっただろう。そのことからもユニオンを活用する社会的な意義が確認できる。
 多くの中小企業の労働者は、労働組合・ユニオンというキーワードにすらたどりつけず、泣き寝入りするケースが多いことが容易に想像できる。一人でも入れる地域ユニオンはほんとうに重要である。
北川寿一(はりまユニオン副委員長)