新社会兵庫ナウ

おんなの目(2025年8月13日号) 
本気の片づけ

2025/08/13
 神戸市垂水区に居を構える我が家は、100年以上の歴史を持つ宗教法人で、270坪の敷地に3軒の建物があります。と、聞くと何やら凄そうですが、実はそうでもなく……。
 一番新しい「建物①」(築8年)はそれほどでもありませんが、「建物②」(阪神大震災後に建て替えた)と「建物③」(昭和57年の建築)は長年使われずに倉庫と化し、大量の物で塞がれていました。「実家は汚い」と実の娘まで寄り付かないありさまでした。
 ところが今年3月、長男に背中を押され、と言うよりお尻を叩かれて「本気の片づけ」が始まったのです。
 それは家族だけでは到底、成し得ないことだったのは間違いありません。実は有難いことに「応援団」が出現してくれたのです。息子の友人のTAさんとTOさん、TOさんの息子くん(18歳)と元里子くん(20歳)、そしてうちの息子と夫と私の7人が片づけ隊のメンバーでした。
 応援団はほぼ毎週末、大阪から通ってくれました。毎回、ある程度の日当はお渡ししたのですが、皆さんの働きはお金で購えるレベルではなく、他人の家の片づけを完全に自分ごととしてやり甲斐と喜びを感じてくれていました。ものすごく大変な仕事なのに、そこには愛がありました。
 最初の頃はビフォーアフターの写真を撮っていたのですが、丸3カ月に及ぶ片付けには締め切りがあり、6月が近づくにつれ写真を撮る余裕がなくなりました。ひたすら作業に没頭し、わずか1日で、ほんの半日で、信じられないほど片付いたエリアを見ては「写真を撮っておけば良かったね」ということの繰り返しでした。
 駐車場には毎回ゴミ袋の山が出現し(ブルーマウンテンと呼ばれていました)、45リットルのゴミ袋を30枚、50枚、100枚と買ってもすぐ無くなりました。こんなに沢山のゴミと今まで暮らしていたのかと思うと恐ろしかったです。古着も相当出しました。それまで古着を出せる回収ボックスが車で30分くらいの所にあったのですが、この片付けの途中で家から2分の所に前からあった古紙回収ボックスに古着用のボックスが突然追加されて天からの応援を感じました。
 私も段々、「捨てれる人間」になりました。以前は1軍だけあれば良いのに2軍、3軍、4軍まで置いていたのですが、今は「使わないものは捨てる」ことが出来るようになりました。
 そうして片付けの済んだ所では、物が出て掃除がされ、窓が開いて光が入り、風が通り、小鳥の囀りまで聞こえて来て、なんとも気持ちの良い空間になりました。屋内だけでなく建物①と建物②の間の通路はまるで茶室に向かう路地の風情です。
 今、6月にあった大きなイベントを無事に終え、改めて我が家を見るとまさに夢のようです。
 息子は今後、わが家を「みんなの家」と位置づけ、イベントや合宿に活用していきたい考えです。この度の片づけで宗教色は極力排除されましたが、来られた方が喜ばれ居心地よさそうに寛いでくださる姿を見ると、「来た人を喜ばさずには帰されん」と仰った教祖の言葉そのままで、夫も私も嬉しい限りです。涼しくなったら娘の一家にも遊びに来てもらおうと思っています。
(YT)