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【ひょうごのまちを訪ねて 宍粟市】
耕作放棄地を利用したセンダンの試験栽培
−大畑利明宍粟市議に聞く−

2020/07/28
 写真:センダンの4年余りの間の成長ぶりを説明する大畑利明・宍粟市議=7月5日、宍粟市
広葉樹センダンの活用で多くの利点
 高齢化と後継者不足などで耕作放棄地が年々広がるなか、中山間地の再生が大きな課題になっている。宍粟市では、森林の活用と里山の再生をテーマにした市民の学習会を機に、5年前に「早生樹活用研究会」が発足。2016年に、成長が早く高い材価が期待できる広葉樹のセンダンの耕作放棄地での試験栽培が始まった。同研究会の副会長で宍粟市議会議員の大畑利明さんの案内で同市梯の実験圃場を訪ねた。
 
 研究会のメンバーによって、30年以上も耕作が放棄された棚田を借り受けて整備し、高さ1㍍足らずの苗木を植えて4年。かつての耕作放棄地は、センダンが空に向かって真っすぐに伸び、枝葉を広げ、うっそうとした森のようになっている。120本が植えられているが、いちばん成長が早いので樹高が10㍍を超えている。
 センダンは成長すると枝分かれするために木材利用が難しかったが、年2回程度「芽かき」をすることで幹をまっすぐに成長させることが可能になった。
 大畑さんは、センダンの利点について、①伐採まで50年かかるスギやヒノキに比べ15年から20年で伐採が可能。自分の代で収穫でき、かつ高い材価が期待できる、②鹿の食害事例が少ない、③育林作業を行う上で集落に近い耕作放棄地が最適だし、この取り組みを通じて他の耕作放棄地対策に繋ぐことができる……、などと指摘し、「今は宍粟と養父に止まっているこの実験が、同じように里山の荒廃に悩む西北播や但馬・丹波の各地に広がれば」と語る。
 船団をめぐっては、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度の導入(2012年)で、バイオマス発電の燃料への需要も見込めるようになっていること。また、林野庁の「森林・林業基本計画」の見直し(2016年)で、「荒廃農地の森林としての活用」のなかに、「早生樹等の植樹に取り組む」と明記されたこと。さらに、市の耕作放棄地対策事業の中にも支援対象として位置づけられた。
 広葉樹センダンが国や自治体から注目されるようになり、支援体制が徐々に確立されつつある。
 大畑さんは、こうした条件を生かしながら将来的には「センダンの活用で地域に利益が還元できる仕組みをつくることで、若い人たちが帰ってきて定住できるよう取り組みたい。そのことが少子高齢化問題の解消にも繋がる」と熱い思いを語る。
 耕作放棄地は全耕地の2割(6900㌶)を超えている。全国各地で、これ以上の荒廃を防ごうと中山間地の再生へ柳やユーカリ、柚子などの栽培がおこなわれている。宍粟のセンダン栽培もこれらと軌を一つにするものであるが、同時に林業と農業双方が持つ保水、防災、景観、CO2吸収など多面的機能と公益性を維持し発展させ、循環型の地域社会づくりを視野に入れた取り組みとして注目される。                        
(鍋島浩一)
 写真:耕作放棄地をセンダン120本の植樹のために整備=2016年4月、宍粟市