新社会兵庫ナウ

若者の広場(2025年6月25日号) 
介護現場の安全

2025/06/25
 「人手不足」の言葉が常に聞こえてくる介護現場、それがいったいどんな影響を及ぼしているのか。例えば、ワンフロア20人程の利用者の特別養護老人福祉施設で、3人から4人の職員で日中は利用者の方々をサポートしています。当然、交代で昼食休憩などを取っていきますが、その間は2人、もしくは3人で利用者をみることになります。トイレなどの介助の際に、ご自分で立つのが難しい利用者さんには職員が2人がかりで介助に入ることになり、フロアの利用者の見守りは残った1人の職員で行います。人手不足が常態化しているため、どうしても2人でみている日も増えているのが現状で、トイレの入り口から半身の状態でフロアは大丈夫かとひやひやしながら眺め、ほんの数秒でもフロアを見守れていないことがあります。こういったことから、最近ではニュースなどでも耳にするようになった地域の方が見守りスタッフとして、ボランティアで利用者の話し相手をしていただいたりする動きが少しずつ広まってきています。仕事を定年退職後にボランティアで来ている方も会話をすることで、認知症の予防にも繋がるため、こういった地域の助け合いが活性化してほしいと感じています。
 介護保険法で決められている最低限の人員基準は、入所者3人につき1人以上となっています。しかし、実際には有給の義務化やシフト調整などがあり、この最低基準では到底回らないのが実情です。人員を増やせるように職員の賃金を上げ、人が集まるようになれば良いですが、電気代やガス代、燃料代などのコスト負担は年々上昇していて、処遇改善加算制度が一本化され、加算率の引き上げが始まったものの、他産業との賃金格差の縮小に向けて取り組みを進めるには、到底賄いきれない状況です。事業を継続していくためには、果たして介護保険制度はこのままでいいのか、助成金などは施設が安定的に運営するために足りているのかなど、介護を巡る問題は山積みです。社会全体でこの問題を考え議論し、協力しあいながら解決に向けて考える必要があると思います。
 誰もが年齢を重ね介護を必要とする時がやってきます。また、親を介護する日もやってきます。仕事をしていれば1日中そばで親を介護することが難しい場面がでてきます。その時、仕事を続けるには施設に預ける選択肢もでてくることでしょう。しかし、今の介護現場を取り巻く状況は厳しいものがあります。今後も介護を必要とする人は増え続けていきます。誰もが平等に介護を受けられるように、そこで働く介護職の待遇改善や労働環境整備をすることにより、介護現場の安全は担保され継続できるものだと思います。
(M・K)