新社会兵庫ナウ

おんなの目(2025年6月11日号)
STOP ジェノサイド

2025/06/11
   「ガザの行動について書いて」と言われることが時々ある。実はそのたびに困惑したり違和感を持ったりしていた。なぜ? 私はパレスチナのこと”だけ”をやっているわけではないし、毎日のように行動しているわけでもないし、行動を主催しているわけでもないのに。しかし今回、自分の中でわかったことがある。執筆を依頼してくれる人(あるいは団体)は、パレスチナのこと、あるいはパレスチナ連帯の行動を非常に重要視しているということだと。そして、特別な人たちだけではなく、自分のようなごく普通の人の普通の行動”も”、大事だということ。ごく普通の人の普通の行動を知ってもらうことによって、これなら自分も、と身近に感じて動き出す人がいるかもしれない。
 私は正直、パレスチナの問題についてはほとんど知識がなかったし、実は今でもさほどあるわけではない。行動している人たちは本を読んだり講演会に行ったりしてとても勉強している。だが、パレスチナとイスラエルの関係や歴史を熟知しなければ行動してはいけないのではないか、と躊躇するのは大間違いだ。私は「ジェノサイドを許さない」というその一点だけでもいいと思っている。
 2023年10月以降、神戸では疋田香澄さん主催のパレスチナの暴力に反対するスタンディングが隔週(当初は毎週)の日曜日に行われている。毎回30人から40人が集まり、プラカードを掲げたり、マイクアピールをしたり、チラシを配ったりしながら声を上げている。年齢層も10代から80代までと幅広く、赤ちゃんを抱っこした人、犬を連れた人などさまざまだ。スタンディングをしていると嫌がらせを受けたり、冷笑を浴びせられたりすることもある。主催者の疋田さんはイスラエル人シオニストに暴力を受け、全治2週間(実際は現在も完治していない)の怪我を負った。参加者たちは日々入ってくるパレスチナの悲惨な状況(爆撃の様子、生きたまま火に焼かれる人々、人為的飢餓によってやせ細って餓死していく子どもたち)に心を蝕まれそうになっている上に、ボイコットの話などから友人や周囲の人に心無い言葉を浴びせられ、関係を断たざるを得なくなることもある。このようにダメージを負いながらも行動を続けているのは、ひとえにパレスチナの市民が、子どもたちが、虐殺されていくのを黙って見てはいられない、という強い思いからである。
 疋田さんのスタンディングが無い週の日曜日は、有志の4、5人のメンバーで元町駅前の巨大なベンチにプラカードを並べたり持ったりして座る「シッティング」をしている。私は個人でもどこかに出かける時は「STOP GAZA GENOCIDE」と記したプラカードを持って歩いているし、たまにはさまざまな場所で短時間の1人サイレント・スタンディングをしたりもする。その際はうなずいてくれたり、サムズアップしてくれたりの反応がある。声をかけてくれる人とはボイコットの情報交換や、首相官邸や外務省に意見を送ることを勧めたりする。反応があることが嬉しいのは、自分の行為が認められたと思うからではない。パレスチナのことを思い、イスラエルの虐殺に反対する人がそこに確実に存在することが可視化されてわかるからである。そしてまた行動を続けようという元気が出る。
(小田悦代)