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私の主張(2024年12月25日号)
年収103万円の壁を考える
家族単位から個人単位へが肝
2024/12/25
先の総選挙で「手取りを増やす」と訴えた国民民主党が少数与党となった自公政権に要求したのが、「年収の壁」引き上げだ。政府は、自民、公明、国民民主の3党合意をもとに総合経済対策を作成し、補正予算案賛成を条件に、「年収103万円の壁引き上げ」を明記する約束をした。具体的内容はこれからだ。3党間の考え方に隔たりは大きく、地方自治体からは税収が減ることになり事業運営に支障をきたすと異論もあがっている。
ところで、「年収の壁」とは何か。壁の定義ははっきりしないが、国民民主党の発言等から、対象はいわゆるサラリーマンに扶養される配偶者(主として妻)、あるいは扶養されアルバイト等で働く学生達だと考えられる。彼ら彼女らは壁を超えない年収に抑えるために労働時間を「調整」して働いてきた。そのボーダーラインとなる額が、所得税の課税103万、社会保険の加入義務106万、配偶者の健康保険や厚生年金保険の被扶養者としての認定130万である。
納税者に所得税法上の控除対象配偶者がいる場合に受けられる配偶者控除の条件には、「配偶者が給与所得のみなら給与収入103万円以下」がある。1961年から始まったが、「夫が働き、妻が家庭を守る」という役割の妻に対し「内助の功」を評価する形で、高度成長期を支える男女役割分担を固定化する役割を担った。
1986年に国民年金3号被保険者制度が導入された。会社員など2号被保険者に扶養される配偶者は、届け出によってその期間、個人が保険料負担することなく納付したものとみなされ、将来の年金権を確保することに繋がる。さらに、同じ1986年施行の均等法、労働者派遣法によって、女性の働き方は「妻・母」の役割に支障がない働き方=短時間労働・不安定労働へと誘導されていった。
これら税や社会保障の在り方を形成した基本は、1970年代から自民党が練り上げた「日本型福祉社会構想」をもとに、公的な社会福祉を削減し、「家族」にケアの責任を負わせる家族単位を基本とした各種制度である。
しかし、バブルの崩壊、労働者の4割を超える人々の非正規雇用化、少子高齢社会への急激な変化などを背景に貧困化が進み、家族の形も変容した。すでに2020年の国勢調査でも単身世帯は38・1%、国立社会保障・人口問題研究所は2050年には44・3%になると推計している。国のモデル家族は構成できなくなり、家族を単位にした制度は破綻すると言っても過言ではない。
「年収の壁」は、家族単位のもとで「扶養家族であること」を維持するラインを決めたものだが、この仕組みに誘導され、極めて低賃金、劣悪な雇用条件の働き方を定着させた。シングルで働く人や若年者のブラックな働き方の背景になった。特に現在40代、50代の人たちは、非正規労働者として働くことを余儀なくされ、低賃金だけでなく被用者年金制度の埒外に置かれたままの人も多い。未婚率も高い。家族構成や性別に関係なく、一人の労働者が基本的な生活を維持できる条件を確立すれば、誰もが自分自身の生活設計をすることができるのだと、ぜひとも再確認してほしい。
国民民主党の178万円の根拠は、最低賃金が1995年から現在まで約1・73倍に上昇したので同じ比率で103万の壁を見直せば、178万円になるというものだが、家族単位であることは変らない。ボーダーラインのせめぎ合いはあっても、家族単位を死守したい自民党にとっては許容の範囲に違いない。
「103万だから損」、「178万になれば得」という計算ではない。103万円を1万円超過した場合、扶養から外れて課税される可能性があるが、所得税は給与所得から103万円を差し引いた額に所得税率5%をかけるので、ゼロだったものが500円になり復興特別所得税も含め510円徴収されるが、手取り収入は9490円増える。壁に捉われず、もっと賃金が増えれば確実に手取りは増える。夫の扶養手当や配偶者控除、社会保険料など制度が複雑に絡んで損得勘定に目が向くが、例えば将来の年金は、3号被保険者として満額受給でも月額6万8千円。厚生年金には及ばない。
基本はすべての労働者が人間らしく生活できる賃金に引上げることだ。さらに物価高騰が激しい現在、消費税廃止・当面0%にすれば実質賃金引き上げと同様の効果につながる。家族単位から個人単位へ変えよう、ジェンダー平等を確立しようと声を上げる時が来ているのだ。
岡粼ひろみ(新社会党中央執行委員長)
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ところで、「年収の壁」とは何か。壁の定義ははっきりしないが、国民民主党の発言等から、対象はいわゆるサラリーマンに扶養される配偶者(主として妻)、あるいは扶養されアルバイト等で働く学生達だと考えられる。彼ら彼女らは壁を超えない年収に抑えるために労働時間を「調整」して働いてきた。そのボーダーラインとなる額が、所得税の課税103万、社会保険の加入義務106万、配偶者の健康保険や厚生年金保険の被扶養者としての認定130万である。
納税者に所得税法上の控除対象配偶者がいる場合に受けられる配偶者控除の条件には、「配偶者が給与所得のみなら給与収入103万円以下」がある。1961年から始まったが、「夫が働き、妻が家庭を守る」という役割の妻に対し「内助の功」を評価する形で、高度成長期を支える男女役割分担を固定化する役割を担った。
1986年に国民年金3号被保険者制度が導入された。会社員など2号被保険者に扶養される配偶者は、届け出によってその期間、個人が保険料負担することなく納付したものとみなされ、将来の年金権を確保することに繋がる。さらに、同じ1986年施行の均等法、労働者派遣法によって、女性の働き方は「妻・母」の役割に支障がない働き方=短時間労働・不安定労働へと誘導されていった。
これら税や社会保障の在り方を形成した基本は、1970年代から自民党が練り上げた「日本型福祉社会構想」をもとに、公的な社会福祉を削減し、「家族」にケアの責任を負わせる家族単位を基本とした各種制度である。
しかし、バブルの崩壊、労働者の4割を超える人々の非正規雇用化、少子高齢社会への急激な変化などを背景に貧困化が進み、家族の形も変容した。すでに2020年の国勢調査でも単身世帯は38・1%、国立社会保障・人口問題研究所は2050年には44・3%になると推計している。国のモデル家族は構成できなくなり、家族を単位にした制度は破綻すると言っても過言ではない。
「年収の壁」は、家族単位のもとで「扶養家族であること」を維持するラインを決めたものだが、この仕組みに誘導され、極めて低賃金、劣悪な雇用条件の働き方を定着させた。シングルで働く人や若年者のブラックな働き方の背景になった。特に現在40代、50代の人たちは、非正規労働者として働くことを余儀なくされ、低賃金だけでなく被用者年金制度の埒外に置かれたままの人も多い。未婚率も高い。家族構成や性別に関係なく、一人の労働者が基本的な生活を維持できる条件を確立すれば、誰もが自分自身の生活設計をすることができるのだと、ぜひとも再確認してほしい。
国民民主党の178万円の根拠は、最低賃金が1995年から現在まで約1・73倍に上昇したので同じ比率で103万の壁を見直せば、178万円になるというものだが、家族単位であることは変らない。ボーダーラインのせめぎ合いはあっても、家族単位を死守したい自民党にとっては許容の範囲に違いない。
「103万だから損」、「178万になれば得」という計算ではない。103万円を1万円超過した場合、扶養から外れて課税される可能性があるが、所得税は給与所得から103万円を差し引いた額に所得税率5%をかけるので、ゼロだったものが500円になり復興特別所得税も含め510円徴収されるが、手取り収入は9490円増える。壁に捉われず、もっと賃金が増えれば確実に手取りは増える。夫の扶養手当や配偶者控除、社会保険料など制度が複雑に絡んで損得勘定に目が向くが、例えば将来の年金は、3号被保険者として満額受給でも月額6万8千円。厚生年金には及ばない。
基本はすべての労働者が人間らしく生活できる賃金に引上げることだ。さらに物価高騰が激しい現在、消費税廃止・当面0%にすれば実質賃金引き上げと同様の効果につながる。家族単位から個人単位へ変えよう、ジェンダー平等を確立しようと声を上げる時が来ているのだ。