新社会兵庫ナウ
水脈(2024年12月11日号)
2024/12/11
谷川俊太郎さんが亡くなり、悼む声とともに、言葉の力を見直そうという気運が盛り上がっている。心が洗われる、元気づく、つながりが蘇る等々。谷川さんのような詩人が、それを掘り起こし、植えつけ、花を咲かせる。人が生きるためには大切なことだ▼ところが、最近、いやな響きの言葉を耳にする。「ひもづく」だ。浅学の身にはあまり聞かない言葉だった。辞書にもない。「ひも」と言えば、ものを括ったり、束ねたりするものである。いやな条件がつくことを「ひも」がつくという。相方を働かせて、自身はぐうたらに暮らす男を「ひも」という▼「ひもづく」という言葉を頻繁に耳にするようになったのは、厚労省が12月2日から健康保険証を廃止すると言い出してからのことのようだ。行政的な事務用語としてなのか。血も涙も暖かさも感じられない。せめて「結びつく」ぐらいの言葉を使う配慮や熱はなかったか。同じ言葉でも、高齢者にはそれなりの響きをもって受けとられることを配慮できないのか▼行政から潤いがなくなっていく。単純に高齢者はデジタルに弱いと思い込んでいるかもしれないが、彼らは、血と涙と汗で、今日の日本を築きあげてきたのだ。人間に大切なものは何だ。