トピックス

県知事選は衝撃的な結末
不信任・失職の前知事が再選

2024/11/17
開票結果と「対話と信頼で改革を実現」と訴えたいなむら和美さん=11月16日、神戸市・中央区

いなむら和美さん 無念

 「対話と信頼で改革を実現」と訴えたいなむら和美さん=11月16日、神戸市・中央区兵庫県議会で全会一致で不信任決議が可決された前知事の失職したことに伴う兵庫県知事選挙は11月17日投開票され、失職して出直し選挙に臨んだ斎藤元彦前知事が再選を果たした。選挙には過去最多の7人が立候補。「対話と信頼で県政の立て直しを」と無所属で立候補した前尼崎市長のいなむら和美さんは97万6637票を獲得したが及ばなかった。いなむら和美さんは政党の推薦は受けなかったが、自民の一部、立憲、国民、公明の議員のほか、新社会党や社民党なども勝手連的に支援した。選挙終盤まで「いなむらややリード」とされていたが、SNSや動画サイトなどで支持を急拡大していった斎藤候補の猛追を許し逆転された。投票率は前回を14・55.上回る55・65%だった。

 それにしても異例の選挙であった。全会一致で不信任をつきつけられての立候補も異例だが、その候補が選挙戦を制したのも異例だ。そして、選挙戦ではSNSや動画配信サイトなどの駆使により、異様な雰囲気や光景がつくられていった。陰謀論やデマも含め、真偽不明の情報が大量に発信され、「斎藤前知事は悪くない、改革は正しかった」「斎藤前知事はむしろ被害者だ」などのネット世論が形成され、加熱していった。逆に百条委員会や議会、さらには「真実を伝えていない」と既存のメディアまでもが批判・不信の対象になり、斎藤候補の街頭演説には3千人にも上る聴衆が集まる場面もうまれた。
 異例さを増幅したのが、「自分には投票しないで」と斎藤候補の応援だけを目的として立候補したN国党首が街頭演説やネット配信で煽動的な独自の主張を繰り返し、斎藤候補の援軍役を果たした。
 こうしてつくられた熱気のなかで、選挙の争点がずれていったと言わねばならない。内部告発文書をめぐる前知事の対応や知事としての資質が問われるとともに、県民にとっては住みよい県政、職員にとっては働きやすい職場環境をどうつくっていくのが問われるべき選挙が、「既得権益勢力、既存勢力」に「改革派」を標榜する斎藤候補が立ち向かうというような構図が描かれていった。
 いなむら和美さん自身も、「斎藤候補と争ったというより何と向かいあっているのかという違和感があった。候補者の資質や政策よりも何を信じるのかということが大きなテーマになった」と率直に感想の一端を述べている。デマなどの攻撃対象となり、しっかり公約は訴えたが、流されたデマや誤解の訂正から話を始めなければならないという事態にもなっていた。