新社会兵庫ナウ

私の主張(2024年11月27日号)
マイナ保険証
12月2日からどうなる 当問題を参院選の争点に

2024/11/27
■12月2日から何が起きるか
 厚労省は、1割強の利用率でも、現行健康保険証の発行停止を強行しようとしている。「保険証の期限が切れたら使えなくなる」のだ。ただし、マイナ保険証を持っていない人にはほとんど変化はない。保険証の期限が切れても「資格確認書」が届き、「保険証」として使えるからだ。
 問題は、「マイナ保険証」を登録しているが「健康保険証」を使っている場合だ。「健康保険証」の期限が切れると、「マイナ保険証=マイナカード」しか使えなくなる。そうなると、通院には必ず携帯し、毎回窓口で使用せざるを得なくなる。「窓口で手間取る(他の人に迷惑)」ことなどが心配だ。「紛失、盗難」「マイナ保険証の期限切れ、更新手続き」も不安だ。
■マイナ保険証登録はまだ6割
 デジタル庁のホームページをみると、10月25日の発表で、マイナカード保有者数は9388万人(75・2%)に達している。これで、厚労省やデータ庁は強気になっているようだ。しかし、そのうちマイナ保険証登録者数は7627万人(81・2%)だ。概算すれば、マイナ保険証登録率はまだ61・1%でしかない。9月のマイナ保険証利用率が13・9%だから、マイナ保険証登録者の約8割がマイナ保険証ではなく、現行の健康保険証を使っているのだ。
■政府の「マイナ保険証登録者救済策」
 厚労省は、受付時の混乱回避のため、紙の「資格情報のお知らせ」なるものを登録者に送ることにした。これを使えば保険診療が受けられるというものだ。そのため、マイナ保険証だけでなく、「資格情報のお知らせ」も一緒に携帯しなければならないという代物だ。
■本当の「マイナ保険証登録者救済策」
 マイナ保険証登録者で健康保険を使っている人の多くは高齢者で、マイナポイント騒動に巻き込まれて登録した人が多いようだ。前述の不安に置かれている。
 その不安から逃れる方法は、マイナ保険証の「登録解除」だ。厚労省は、いやいやこの制度を10月末から実施した。面倒だが、市町村の窓口で申請すれば、「資格確認書」に切り替えられ、安心して健康保険証として使えるようになる。受け取ったマイナポイントは返す必要はない。身分証明書としてマイナカードは手元に残すことができる。
■「保険組合」の事務作業は大変
 一方、「保険組合」は大変な事務作業を押し付けられることになる。マイナ保険証登録者と非登録者を振り分けて、登録者には「資格情報のお知らせ」、非登録者には「資格証明書」を送らなければならない。考えただけでも頭が痛くなる、「間違いが許されない」業務だ。 その解決策として登場したのが、仕分けせずに全員に「資格確認書」を送る方法だ。すでにそうすると決めた自治体もあるようだ。
■怒りはこれから噴出する
 
マイナポイントや医療機関への奨励金という「飴」と企業・健保組合からの圧力などの「鞭」によって、6割強がマイナ保険証登録をした。政府、与党(+国民民主、維新)は強行突破できるとみているようだ。
 しかし、複雑な制度と使いにくさで混乱が続き、無駄な仕事が増えるなかで、不満と怒りはこれから噴出するだろう。「マイナ保険証」を国民が理解できず、受け入れていないのだ。
 社会のデジタル化は理解を得ながら丁寧に進めるべきものだ。健康保険証の廃止をストップして、従来の保険証を安心して使えるようにすることが、来年6月に行われる参院選の大きな争点の一つになるのではなかろうか。
■ボイコットを大きな社会運動に
 とにかく、仕組み・制度が複雑になって、わかりにくくなってしまった。そのため、各地で学習会や講演会を組織する必要がある。都亭アロハさんが創作された「落語でわかるマイナ保険証」も大きな力になるだろう。
 前述した「全員に資格確認書を送る」ことを自治体に求める取り組みはすぐ取り組めることだ。
 決め手は、多くの人が「マイナ保険証」を使わないことが明らかになることだ。国民的ボイコット運動という大きな社会運動にすれば、成功だ。
■立民が発行停止延期法案を提出
 ここまで原稿を書き進めていたら、11月12日に立憲民主党が「健康保険証の新規発行停止の期日延期法案」を提出した。「国民の不安が払拭する」までは、「現行の保険証を発行する」というものだ。
 もしこれが通れば、じっくりとボイコット運動が展開できるし、「マイナカード」と「マイナ保険証」について、費用やシステムを民主的に議論することができる。日本の政治のあり方を大きく変えるものになるだろう。
佐野修吉(憲法を生かす会西神戸連絡会・事務局長)