新社会兵庫ナウ

水脈(2024年10月9日号)

2024/10/09
 NHK・ETV特集が伝えた日本の精神科医療の問題。長期の入院により(時には40年以上にも)社会と絶たれる人々。死亡退院と呼ばれる病院による患者虐待。社会からの隔離で深まる人権侵害の実情は深刻だ▼同じことが起きた。精神科病院「明石土山病院」で、約2年にわたる「隔離室」での生活中、朝食のパンを喉に詰まらせて窒息死した初田竹重さん。50歳だった。3畳ほどの隔離室は外から鍵が掛けられ、自由に出入りすることができない。本人も両親も病院に対し、隔離室から出すよう再三求めていた最中だった▼竹重さんが亡くなって3年半。隔離室から解放される時間が極端に少なく(亡くなる前128日間は終日隔離)、筋力が弱り、飲み込む力もなくなっていたのではないか。少ない巡回で死亡時の状況も分からないなど、十分な治療だったのか。納得いく説明を求め、竹重さんの無念を晴らしたいと、ご両親は8月、神戸地裁に提訴した▼本紙読者のご両親は、裁判を通し、息子と同じことが起きないようにと訴える。精神科病院大国・日本の隔離策は、国連から何度も「深刻な人権侵害」と勧告されている。発足した「竹重さんの人権回復を求める会」と共に支えよう。