新社会兵庫ナウ

おんなの目(2024年10月9日号)
ヘルパーがいなくなってしまう・・・

2024/10/09
  「今まで土日も無しに高齢者のために頑張ってきたけど、もう心が折れました」「この猛暑のためか、1日に2回、3回訪問していた重度の方の入院や入所で一挙に仕事が減り、経営が成り立たなくなった。訪問介護はもともと報酬が低く不安定で、若い人を正規で雇うこともできない」―。これは、訪問介護事業所を廃業するという管理者の悔しさ混じりの声です。
 今年4月の介護保険制度改定で施設関係の介護報酬が引き上げられた一方で、在宅介護の要、訪問介護の介護報酬だけが下げられるという暴挙が行われました。私は本当に腹が立ちました。
 私は一昨年まで25年間、高齢者、障がい者の在宅介護を支えるホームヘルパーとして働いてきました。母の看取りもあり、退職しましたが、いま、安心と笑顔の社会保障ネットワーク(安心ネット)や垂水ユニオンで介護労働者の交流会開催等の活動を行っています。
 この猛暑の中、ヘルパーさんたち(高齢化が進み60歳代、70歳代の多くは女性たち)は自転車を漕ぎ、一件一件訪問し、マスクをして、掃除、洗濯、調理、入浴介助やオムツ交換を汗まみれになって、時間を気にしながら働いているのです。非正規の低い時給、また、女性であるが故の少ない年金のため、自身の生活のためもありますが、「私が行かないとこの高齢者が困ってしまう。ご飯が食べられない、おしっこまみれになってしまう」―、多くのヘルパーさんたちはこんな思いで今日も汗にまみれて奔走しているのです。この制度改悪はそれを完全に否定した訳です。
 私は神戸市会の環境福祉委員会で、「このままでは在宅介護の要のヘルパーはいなくなってしまう。もっと危機感を持ってほしい!保険者として介護現場の実態を調査し、賃金上乗せ等の待遇改善を!」と訴えましたが、市の担当課は「支援事業『コウベdeカイゴ』をやっている」と言うばかり。因みにこれは若い人が採用されてはじめて補助金が出るもので、そもそもいまは若い人の応募が無い。そして、つなぐ議員団と共産党以外の議員は私たちの願いを踏みにじり、陳情書は「不採択となりました。
 そこで市が調査しないのなら、自分たちで現場の声を集めよう、と私たちはアンケートをお願いしに訪問介護事業所を回りました。どこも人手不足は深刻で、私自身も「うちで働きませんか?」と勧誘される始末。冒頭の声はその中で聞いてきた声です。実際に廃業や事業の縮小が行われています。アンケートで返ってきた声を一部紹介すると、「完全な切り捨て政策としか考えられない。制度を考えているメンバーを適切な現状を把握できるメンバーに変えないといけない」「公務員が現場のことを知らなさすぎるので介護の現場を1年以上経験してからしか公務員になれないようにすれば?」「在宅での介護の必要性をもっと考えてほしい」―。どれももっともな怒りの声です。
 こうした実情を多くの方に知っていただきたい、行政を動かしたい、そんな思いで「安心ネット」は10月27日(日)に日下部雅喜さんの講演会を開きます。ぜひお越し下さい。
(菊地真千子)