改憲の動きをウオッチング

(2024年10月9日号)

2024/10/09
■進む戦争準備 退陣する岸田政権の許されない置き土産
 2015年に安保法制(戦争法)が成立してから9年が経った。前号で岸田政権の大罪についてふれたが岸田首相のその後の策動を追う。
〈肥大化する軍事費〉
 
防衛省は2025年度予算の概算要求を決定した。軍事力の抜本的強化を掲げた整備計画3年目の要求額は、初の8兆円台で過去最大の8兆5389億円。専守防衛との矛盾が指摘される敵基地攻撃能力に使用可能なミサイルなどと並び攻撃型ドローンの取得費も初めて計上した(東京)。
 ちなみに、軍事費は年々膨張しており、5兆円台だった当初予算は、23年度は6兆8千億円、24年度は7兆9千億円に肥大化した。
 政府は23年度からの5年間で軍事費を総額43 兆円にする方針を閣議決定しているが、戦闘機や艦艇などを調達すれば、単価の高騰で43兆円に収まらず、軍事増税が現実のものになってくる。
 防衛省は自衛隊の司令部の地下化について概算要求で2施設を含む13施設が対象となるとしている。新たな2施設は、海上自衛隊舞鶴地方総監部と航空自衛隊千歳基地で、基地が攻撃されても戦闘能力を高めるのが狙いだ。
〈他国軍との軍事訓練加速 NATO各国とも〉
 東京新聞によると自衛隊と他国軍の軍事訓練は、2015年の戦争法成立前に比べ3倍以上に増加した。防衛省は日本への攻撃を思いとどまらせる抑止力の向上を狙いに挙げている。
 防衛白書で公表されている米軍との共同訓練は、戦争法が成立する前の2014年度に25回だったが、増加傾向をたどって2023年度は82回に。3カ国以上で行う多国間訓練を含めると、42回から142回に増えている。
自衛隊は今夏、中国とロシアを念頭に、遠く離れた北大西洋条約機構(NATO)との訓練を日本周辺で実施。7月にはスペイン空軍機と空自やドイツ空軍と編隊飛行訓練、さらに8月にイタリアの空母も訓練で初寄港。
 さらにインドネシアや米国など22カ国による合同軍事演習の水陸両用作戦の訓練がインドネシアのジャワ島で行われた(時事)。陸上自衛隊の水陸機動団が参加している。
 毎年刊行される防衛白書は、2024年版から安保法関連の自衛隊活動の掲載を取りやめており、同法で新たに付与された自衛隊の任務や活動の変遷は、より見えづらくなっていると言われる。
〈岸田首相、退陣直前の訪米 そのウラは?〉
 岸田首相は退陣直前という異例のタイミングで訪米した。各国首脳との会談を重ね、安全保障(軍事協力)について協議・合意を広めた。
・日米首脳会談=抑止力、対処力の向上確認、中国による東・南シナ海での力による現状変更に反対。日米豪印4カ国の協力枠組み「クアッド」の首脳会合。中国念頭に合同の監視活動や訓練など新たな取り組みを実施する。
・日本と欧州連合(EU)=「安全保障・防衛対話」の新設、自衛隊とEU海軍部隊の共同訓練や第3国を含む合同演習の推進を通じた海洋安全保障協力の強化を確認。海洋進出を強める中国の動きをけん制する。
・日本・モンゴル首脳会談=2国間で武器輸出入を可能にする「防衛装備品・技術移転協定」に実質合意したことを確認し、早期署名を目指す方針で一致した。
 欧州連合(EU)のミシェル大統領とも会談し、かつてなく強固な日・EUの関係を築けたと評価。引き続き緊密に連携していくことを確認した。
 新内閣は10月1日発足する見通し。退陣直前の訪米は岸田路線の継承を迫る思惑が透ける。
(中)