新社会兵庫ナウ

私の主張(2024年9月25日号)
健康保険証の廃止を許さずマイナ保険証STOP運動を

2024/09/25
迫る健康保険証廃止
 政府が強行突破を決めた健康保険証の廃止日、12月2日まで2ヶ月余になった。このまま突き進めば、医療現場は大混乱すると言われている。「暗証番号の確認」「顔認証」などカードの読み取りがスムーズにいかないケースが多発すると予想されているからだ。
自民党総裁選でも異論登場
 ところが自民党の総裁選挙で、現職の官房長官である林芳正、元幹事長の石破茂の両氏から「見直し」論が出た。
 と思ったのもつかの間、14日の共同記者会見では「不安解消・丁寧な説明」に後退し、河野太郎氏はしたり顔であった。
 だがここで重要なことは、厚労省、デジタル庁が『廃止』を強調できなくなったことである。「『廃止』ではありません。新たな保険証は発行しませんが、そのかわりに発行する『資格確認証』は現行の保険証とほとんど同じもので、当面5年間は有効です」と、説明せざるをえなくなったのだ。
利用率は一割程度
 8月のマイナ保険証利用率はまだ発表されていないが、7月の利用率はわずか11%台だ。政府が「廃止になる」と不安を煽ることができず、「廃止ではないこと」を説明すれば、利用率は伸びない。12月になっても、1割、多くて2割程度にしかならないだろう。
保険証「廃止」の弊害
 仮に2割の利用率だと仮定しよう。この場合、医療窓口の混乱はさほど大きくならないかもしれない。大多数が紙の保険証を使うため、現在の状況と大差がないからだ。
 ただし、「紙」と「カード」に分けて対応しなければならないから、医療事務負担はとても重いものなる。
 さらに大きな被害を受けるのは、各保険組合である。今までは、一度発行すれば転職や結婚などでの氏名変更に対応すれば十分だった(自治体は、毎年送付)。それが、①「資格確認書」の送付、②「資格情報のお知らせ」の作成と送付も必要になった。
 企業の健保組合は、企業宛の送付で済むが、自治体の場合は各個人に郵送しなければならない。現行の制度であればまったく不要な業務と費用である。
窓口手続きが複雑なものに
 これまでは病院や薬局の窓口では紙の保険証一つですんでいた。それが、①マイナ保険証、②資格情報のお知らせ、③現行の保険証、④資格確認書の4種類に病院や薬局は対応しなければならない。
 なかでもややこしいのが、②の「資格情報のお知らせ」だ。マイナ保険証で受診時に、加入者の最新情報(といっても1か月半前のもの)をオンラインで医療機関へ提供するために作られた。これを使いこなすのが難しいようだ。
 そのほか「マイナポータルのPDFの写し」ができ、「スマホマイナンバーカード」も構想され、窓口での資格パターンは9種類になる。
結局、不便を強い、無駄な投資になる
 また、マイナカードの期限切れ更新問題が生じる。現行の保険証は自分で更新する必要はない。だが、マイナ保険証には有効期限があって5年である。事前に利用者が更新手続きをしなければ、保険医療が受けられない深刻なトラブルが予想される。
 政府・自民党は「デジタル化」を呪文のごとくとなえている。しかし、今進められているマイナ保険証は本来のデジタル化とかけ離れたものだ。真のデジタル化は利用者が便利だと実感しなければ実現しないものだ。
 問題が続出するたびに「改善策」を繰り出したために、複雑怪奇なものになっている。利用者に不便を強いるだけでなく、巨額の無駄な投資がさらに続くことになる。
大胆にマイナ保険証STOP運動を
 自公政権は、軍事費倍増など「政府が決めたこと」にすれば、国民はそのうち諦めると高をくくっている。
 しかし、このマイナ保険証問題は、実生活に強く結びついている。政府がこのまま突き進めば、老いも若きも困惑し、怒るだろう。
 今の政権が、人々の生活より大企業の利益追求を最優先していることが浮かび上がる。この事実を分かりやすく説明し、総選挙や参議院選挙で訴え、そのうえでマイナ保険証をSTOPさせる運動を各地で大胆に展開するチャンスが到来している。
佐野修吉(憲法を生かす会・西神戸連絡会事務局長)