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解雇規制の緩和の行き先

2024/09/25
 ある歯科医院の解雇問題の相談を受け、交渉することになった。相談者のAさんは26歳女性。勤続6年、受付と助手の仕事をしている。
 9月2日、勤務後に歯科医に呼ばれた。「今、人件費ちょっと減らさなあかんねん。Aさんに辞めてもらう」という寝耳に水の話にAさんは驚いた。歯科医からパワハラを受けていたAさんは、退職することに未練はないが、いきなりの通告で、経営状態が悪化している具体的な説明もなく解雇されることには納得できなかった。ユニオンはすぐに要求書を作成し郵送した。
 要求書を見た歯科医は、「Aさん解雇するの、やめるわ」「あの人らと話したくないねん。つるし上げられるのわかってる。あ.ゆ.組合の人らって慣れてる。ごっつい言われるねん。それが嫌やから、堪忍して欲しい。あなたにおってもらう方向でせなしゃあない」と言った。解雇通告しておきながら、ユニオンと交渉したくないから解雇撤回。しかも「しゃあないから雇う」は失礼すぎる。
 歯科医は「解雇撤回したから問題ない」「話し合いはしない」と言ったが、法律に違反すること、解雇撤回は要求にないことなどを説明し、交渉することが決まった。
 ユニオンと交渉することが「イヤ」ということが、社会的に認知されていることの一面として分かったが、交渉したくないから解雇を撤回するということが腹立たしい。それなら解雇しなければいい。
 解雇規制の緩和が話題になっているが、解雇規制を緩和すれば、「気に入らない者は解雇」という社会になる。その先には「解雇されないために、使用者にモノが言えなくなる」。その先には「声をあげない社会」になる。こんな危険なことはない。間違ったことを「間違っている」と言えない社会では、人権は守られない。
 ユニオンは、問題をひとつずつ解決していくことしかできないが、その機能は、未来の人たちの生きる権利を守ることになると信じたい。明日の交渉はAさんが人権を取り戻すためにがんばろう。
木村文貴子(神戸ワーカーズユニオン書記長)