新社会兵庫ナウ

おんなの目(2024年9月25日号)
「女性支援法」が施行されて

2024/09/25
 「困難な問題を抱える女性支援法」(以下、「女性支援法」)が今年4月に施行されたが、施工前、法律名さえ知られていないのが実情だった。正式名称を知らない自治体職員、議員が多くいたことも事実だった。施行されてからは新聞等で「女性支援法」の名称を目にすることは多くなった。各自治体で、違いはあっても少しずつ前に進もうとしている。
 ただ活動をしている私たちの耳にはよく入ってくる「女性支援法」だが、そうでない人たちはこのような法律ができたことさえ知らないのではないだろうか。どこに行ったらいいのか、どういう相談ができるのか、たぶん多くの女性は知らないだろう。法律ができても「絵に描いた餅」では意味がない。
 私の友人は、つれあいの束縛、暴言を結婚後から受け続けていた。「?」と思ったのが20年ほど前。参加すると言っていた同期会を直前にキャンセルした時だった。理由を聞くために電話をすると、いつもは元気な声が続けざまに出てくるのに、なぜか言葉が出てこない。「ダンナさん、そばにいる?」と聞くと、「うん」と言葉が返ってくる。
  彼女は言う。「親にこれ以上心配かけたくなかった」「こどもには嫌な思いをせず、成長してほしかった」「昔の人はみんな我慢してたんやろな」―。
 明るく、元気いっぱい、今でも電話で聞く声は20代の頃と変わりない。その彼女が2年前、大病を患った。私が同じ病気だったこともあり、本人が連絡してきたのだが、それ以降、病院に行った風がない。気になって連絡しても、「だって怖いやん」。今考えれば怖いだけではなかったんだろう。このままでは病院に行かないと思い、車を走らせ彼女に会いに行った。
彼女が「助けて」と言うことができる場所はどこだったんだろう。「あなたが悪いわけではない。そういう世の中がおかしい」と彼女と話をしたいと思う。
 活動の大先輩からこんな話を聞いた。組合の活動をする時、「女だてらに会長をして」「もっと真面目な活動をするところだ」(その先輩は多くの人が参加できるように楽しい活動も考えていた)と組合運動の仲間の男性に言われたと。
 この男性のつれあいさんは専業主婦なのかなあと思う。私たちの周りにいる男性陣が、みんなこんな考えだとは思わないが、こういう考え方がある限り、この世の中は変わらないだろう。
 私が活動を始めた40年以上前、「外では社会党、帰る途中は民社党、家では自民党」と教えてもらったことがある。大先輩の女性に「女だてらに」と言った男性は、その頃の男性だったんだろうと思う。
 女性が、男性が、と区別されない社会にならないと「女性支援法」が本当に実効性のあるものにならない。
(松永浩美)