新社会兵庫ナウ

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労働相談内容の変化

2024/08/28
 最近、労働相談の内容や質が大きく変化している。1つは、労働相談の約30%以上をパワハラやメンタル関係の相談が占めるようになったことである。ユニオンが結成された1980年代後半では考えられなかった。当初は、パートの年収や社会保険加入基準などが中心。その後、解雇や労災、未払い賃金などがずっと労働相談の中心にあった。しかし、近年、とりわけこの10年ぐらいでパワハラ・メンタル事案が急速に増えてきた。職場の人間関係がうまく作れないことも原因のようだが、「助け合う」とか「許す」とか、〝余裕〞がなくなってきているのではないのだろうか。経営者も、労働者も、目先の利益だけに突っ走り、「今だけ、カネだけ、自分だけ」の「3だけ主義」の波に飲み込まれてしまっているのだ。
 その結果、2つ目の変化としては、経営者の経営能力の無さが指摘される。従業員が会社の将来を危惧し、新たな取引先の拡大や新規事業の開拓などに取り組んでいるのに、経営者がまったく耳を傾けないのである。
 その典型が、廣岡揮八郎の「三田屋事件」だ。これまで三田屋を育ててきたのは、従業員たちであった。昔の番頭ともいえる優秀な従業員3人を中心に、この会社は回っていた。ところが、社長の長男のパワハラ問題が発端で、従業員が大量に退職。5月の一時金支給は、創業以来初の赤字となったことを理由に20%カットを強行。ところが、役員報酬は「年俸制」を理由に現状維持である。
 また、大阪・阿倍野区にあるニチダンという給食会社でも、将来を見越して従業員が大手企業と新規事業の契約を開拓したのに社長が無視をして大口の業務を逃してしまった。その結果、開拓してきた従業員の排除にかかった。ユニオンからの団体交渉を拒否し、経営者が交渉に出て労働者と向き合うこともなく、弁護士に丸投げなのだ。
 当事者同士の対話なくして物事は進まない。異論に耳を傾け、建設的な議論ができる社会、民主主義の立て直しが、労働運動に求められている。
塚原久雄(武庫川ユニオン書記長)