改憲の動きをウオッチング

(2024年8月14日号)

2024/08/14
■日米2+2 在日米軍に指揮権 自衛隊、指揮下に 「拡大抑止」は言語道断 「戦争する国づくり」新たな段階へ
 4月に訪米した岸田首相は連邦議会で「日本は米国と共にある」と演説し、拍手喝さいを浴びた。
 その数カ月後、日米両政府は7月28日、日米安全保障協議委員会(2プラス2)を開催した。日米軍事一体化のさらなる加速が確認された。
 大きな焦点である日米の指揮統制関係について、共同文書は「在日米軍をインド太平洋軍司令官隷下の『統合軍司令部』として再構成する」「再構成された在日米軍は自衛隊に創設する『統合作戦司令部』の1つの重要なカウンターパートになる」と明記している。
 自衛隊は、来年3月に陸海空3自衛隊を一元指揮する「統合作戦司令部」を創設する。現在の在日米軍司令部の機能は基地の管理などに限られているが、今後は在日米軍に指揮・作戦立案などの部隊運用権限を付与する方針。日米の統合司令部が連携強化を図ることになる。
 圧倒的な軍事力と情報収集能力を持つ米軍の判断に引きずられ、日本の指揮権の独立性が損なわれる恐れがある。日米の軍事一体化によって自衛隊が米軍の指揮下に組み込まれる可能性はいよいよ高くなる。
 また、共同文書は地対空誘導弾パトリオットなどの生産能力拡大も盛り込まれた。アメリカはパトリオットをウクライナやイスラエルに供給しているため在庫が枯渇しているといわれる。
「拡大抑止」に関する初めての閣僚会合は、「2プラス2」に合わせて開催された。核抑止は、日本が核攻撃や核の脅しを受けた場合に、米国が核兵器による報復を行う意思と能力を示すことで敵国を自制させることを目指すもの。
 日米両国は2010年から事務レベルによる「拡大抑止」協議を行っている。協議は年1、2回のペースで開催されたが、協議内容の詳細は非公表。事務レベルから格上げすることで実効性を高める狙いがある。閣僚会合では、閣僚級の議論を継続することを確認した。
 上川外相は会合の冒頭で、「『拡大抑止』は日米同盟の中核であり、わが国周辺で核の脅威が高まる中、一層強化していくことが重要だ」と発言(NHK)。
 唯一の被爆国日本で「拡大抑止」は言語道断だ。
※「拡大抑止」 壊滅的な被害を与える核兵器による脅しの効果で、敵国からの攻撃を防ぐとする考え方。冷戦時代に米国と旧ソ連は核軍拡競争を展開し、それぞれの同盟国は抑止力に期待して「核の傘」に入った。自国だけでなく同盟国にも広げて抑止力を提供するため「拡大抑止」と呼ばれ、「核の傘」はその一種。防衛目的の核兵器の存在を正当化する一方、ロシアによるウクライナ侵攻のように、核保有国と非核保有国との間で通常兵器による紛争が起こりやすくなるなど、「核抑止論は破綻している」(松井一実・広島市長)との見方もある(東京新聞)。
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