新社会兵庫ナウ

おんなの目(2024年7月24日号) 
ミャンマーから来る学生たち

2024/07/24
 私の仕事は非常勤の日本語教師だ。日本語学校の学生は、主に日本で働きたいと思ってやってくるアジア各国の若者である。「留学生」と呼ばれているが、日本人が欧米に留学するのとは違い、自国では満足な収入が得られる仕事がないため日本へやって来るのだ。
 10年以上前は、中国人留学生が一番多かったそうだ。コロナの前は、ベトナム人が断然トップだった。しかし、ベトナムは国内の経済がかなり発展し、円安も進んだため、コロナが終わって入国してきたのはネパール人とバングラデシュ人。そして今、急増しているのがミャンマー人学生である。
 2011年の民政移管、2015年の総選挙でのアウンサンスーチー氏率いるNLD(国民民主連盟)の圧勝を経て、ミャンマーは曲がりなりにも民主国家として歩み始めていた。日本や欧米からの資金も流れ込み、多くの企業が未開拓のアジアの新興国に進出した。
 ところが2021年、誰も予想していなかった軍事政権のクーデターである。かつて民衆は軍に屈服したが、今回は違った。10年の民主政治のあいだに自由と豊かさへの希望を味わった市民は、命をかけた闘いに身を投じた。
 非武装の抵抗運動は無残に踏みにじられ、若者たちは武器を手に山岳地帯へ向かった。私たちは心配しながら見守るしかなかった。ところが、昨年の秋から武装抵抗勢力がミャンマー軍に勝利し、支配地域を広げているというニュースが入ってきた。国民の支持を得られないミャンマー軍の士気は落ちているという。
 焦りのあらわれか、今年2月、軍事政権は18歳以上の男女に対する徴兵制の実施を発表した。今年、留学生として日本に入国するミャンマーの若者が、男女とも激増していることと無関係ではないだろう。ある男子学生は、家族のすすめで来日したが、国で大学を卒業しており、以前に日本への留学を考えたことはなかったと話していた。
 今年の5月、軍事政権に抵抗しているN U G(国民統一政府)とKNU(カレン民族同盟)の代表者が来日し、苦しんでいる人々に直接(軍を通さずに)人道的支援を届けるように求めた。少数民族の武装勢力は、ミャンマーが長年抱える問題とされ、それを口実に政府による軍事支配が続いていたという面もある。それが今、民主抵抗勢力と少数民族が協力して軍事政権を倒そうという局面を迎えたのだ。
 思わず「がんばれ」と言いたくなるが、武装抵抗を貫徹することは血が流れ続けるということだ。ウクライナのように、パレスチナのように。つらいことだが、闘うしかないという決意は痛いほど感じる。そして、外国へ逃れたミャンマー人の若者には、身の危険のない所でより良い生活をおくり、いずれは祖国の将来を担ってもらいたいと願う。
(H・N)