改憲の動きをウオッチング

(2024年7月24日号)

2024/07/24
■改憲勢力、秋の臨時国会に改憲原案提出めざす引き続き閉会中審査を要求
 総裁任期中の改憲実現が破綻した自民党は、憲法改正実現本部の中に新たな作業チームを設け、条文化に向けた議論を進めている。衆院と参院の憲法審査会で議論の進捗状況が異なり、衆参で意見の違いがあることから、作業チームは、衆参の足並みをそろえ、条文化の作業を加速させることが目的だ。
 緊急事態条項をめぐっては、「条文案を早期に作成したい衆院側に対し、参院側は各党との協議を重視する」(東京)。また、大規模災害など緊急事態対応をめぐり、「衆院は議員任期の延長を主張し、参院は憲法が定める『緊急集会』の活用を訴え、党内の見解が分かれている」(時事)という状況。
 実現本部の古谷本部長は記者団に「党内の意見を擦り合わせないと、他党との交渉や憲法審の議論に支障が出る」と説明した(東京)。
 衆参の意見の違いは大きい。これでは閉会中審査などを他党に求められるものではなかろう。
■「それでも安保法制は違憲だ」 法律家は訴える集団的自衛権の行使容認から10年
 安倍内閣が憲法解釈を変更し、集団的自衛権の行使容認を閣議決定してから10年。翌2015年には安全保障関連法(戦争法)が成立した。
 第2東京弁護士会の主催で開かれたシンポジウムで元最高裁判事や元内閣法制局長官ら法律のプロは「それでも安保法制は違憲だ」と声を上げた。 東京新聞がシンポジウムの発言を収録している。紙数の関係で全てというわけにはいかないが、いくつか紹介しよう。
 ・元最高裁判事の浜田邦夫氏は参院中央公聴会で「法案は違憲」と明言。シンポジウムで「立法府である国会で議論するべき問題が、行政府である内閣によってどんどん進められてしまった」と問題点を指摘した。
 ・元内閣法制局長官の宮崎礼喜氏は9条1項に触れながら、「40年にわたる積み重ねがある解釈をひっくり返すことになる」と強調。
 ・学習院大大学院の青井美帆教授は「安全保障政策が意識的に憲法問題ではないものとして扱われている」と危機感を表明。「いまの学生が教わるのは政府解釈であり、この世代が社会の中心になろうとしている」と。
 岸田政権下でも2022年、安保関連3文書の改定によって敵基地攻撃能力の保有が閣議決定された。この10年、国の行方を左右する問題が閣議決定で決められた。
 戦争法が制定された2016年以降、全国22カ所の裁判所で計25の訴訟が提起された。原告数は合計7千人以上。
 ・「安保法制違憲訴訟の会」の共同代表を務める伊藤真弁護士はシンポジウムで、「本来は政治の力で改廃させるのが筋。だが、裁判所には違憲立法審査権があり、政治が行ったことの違憲性を指摘することができる。司法の役割を果たしてほしいという思いから訴訟を起こした」と説明。だが、各地の裁判所は徹底して憲法判断を回避した。
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