新社会兵庫ナウ

私の主張(2024年5月22日号)
王子公園再整備問題
住民不在の再開発計画に声を上げつづける

2024/05/22
■住民不在で進められる公園の再開発
 2017年の「都市公園法」の改定で公園政策が大きく変わるなか、いま、全国の公園で市民のための公共空間が再開発にさらされている。その背景や内容に違いはあるものの、共通して言えることは、行政主導・住民不在であり、環境破壊・樹木伐採であることだ。
 昨年末、「コモンズの緑を守る全国ネットワーク」が立ち上げられ、関東圏では明治神宮外苑をはじめとした10数か所の団体、関西圏では京都府立植物園・北山エリアの「なからぎの森の会」、〝樹を切る改革.の「大阪市街路樹撤去を考える会」、そして、私たち「王子公園・市民ミーティング」実行委員会(以下、「市民ミ―ティング」)等、20数か所の団体が加盟している。ネット上での情報交換を通じ、明治神宮外苑を支えつつ、それぞれの公園における運動を前進させることが目的だ。
 神戸の「市民ミーティング」は、このようなつながりを作りながら、いま、運動の第2ステージに臨んでいる。
■審議なき神戸市・都計審に市民の怒りの声
 2月5日、神戸市の「都市計画審議会」(都計審)が開催された。この場で「王子公園再整備計画案」が採択されれば、不透明な政策プロセスで手続きだけを進めてきた神戸市は、次のステップに進むことになる。
 1月末、「市民ミーティング」は、公報による開催通知を早急に出すように求めた上で以下の3点の申し入れを行った。
 ①これまで提出されている市民及び利害関係人による意見書全文を「都市計画審議会」の参考資料として扱われたい。また、資料を傍聴者全員に配布されたい。②「都市計画審議会」の傍聴者が多数になることが考えられる中、傍聴者数の制限をせず、全ての傍聴希望者に傍聴ができるよう別室を確保されたい。③「都市計画審議会」委員からの要請があれば、意見書を提出した市民及び利害関係人の中から数人による口頭陳述の機会をつくられたい。
 この申し入れの結果、①と②は受け入れられた。また、前日までに「都市計画審議会」の議員の委員へのロビー活動に取り組み、当日は悪天候の中での市役所前でのスタンディング行動を経て、メンバーは「都市計画審議会」の傍聴に臨んだ。
 しかし、「都市計画審議会」の時間の大半は、「王子公園再整備計画案」の概要の説明に終始し、審議は数人の議員の委員の質疑のみで、大半の学者・専門家等のいわゆる有識者の委員は、一言も発せぬまま、賛成に挙手した。こうして「王子公園再整備計画案」は呆気なく採択された。これが神戸市の「都市計画審議会」の実状だ。王子公園の未来が、灘区の未来が、神戸市の未来が、このような形で決められていくのかと思うと、怒りは心頭に。
■再整備計画は「環境と防災の時代」に逆行
 来年は阪神・淡路大震災から30年。当時、王子公園は広域避難所、防災拠点、仮設住宅用地に使われ、後日、防災公園に指定されている。このたびの計画では、その折の空地・空間が無くなり、防災機能が一気に落ちる。
 また、王子公園内の樹木については、樹木の現存数や植樹数は公表されたものの未だに伐採数は公表されていない。
 さらに、動・植物への影響、大気汚染、騒音、光害、CO2汚染等々の周辺地域への影響を考え、再三、環境アセスメントの実施を要求してきたが、「新設公園ではないから」という理由で神戸市は実施しようとしない。
 いくつもの課題がありながら、市民の不安は払拭されず、市民との合意形成もできないまま、神戸市は4月、王子公園再整備の実施方針を公表、事業者募集を始めた。そして今年9月、「王子公園再整備計画」の端緒ともなる王子プールの解体を強行しようとしている。
■これからも声を上げ続ける
 こうした状況のなか、「市民ミ―ティング」は、神戸市や関西学院大学に市民説明会を早急に実施するよう求めるとともに、署名行動の第3弾として「王子プールをなくさないで!」の署名行動に取り組む(8月末まで)。
 2021年末、「王子公園再整備計画素案」が提案されてすでに2年半が経とうとしている。ときには焦りと諦めもあったが、多くの市民とともに歩んできたことで〝怒り.を持ち続けている。これからも、市民の力を信じて声を上げる。上げ続ける。
小林るみ子(「王子公園・市民ミーティング」実行委員会・代表)