新社会兵庫ナウ

地域ユニオンあちこちあれこれ432
介護報酬の架空請求問題

2024/05/22
 いま取り組んでいる垂水区の障がい者福祉事業所の問題について報告したい。その会社は、相談事業・訪問介護・就労支援B型を運営しているが、今回は国から介護事業所に入る障害福祉サービスの報酬についての問題。
 組合員の報告によると、会社は利用者宅に訪問していないにもかかわらず、訪問したことにして報酬を請求しているという。例えば、利用者から「友人宅に出かけるので、明日の訪問はキャンセルしてほしい」と連絡を受けて訪問しなくても、報酬を請求している。これは明らかに架空請求である。
 このような不正が起こる原因について、いろんな意見を聞いた。
 そのひとつ。社長が「相談支援専門員」をしており、一人暮らしや生活保護を受けている人を担当している。一人暮らしは家族が同居していないため、訪問などをチェックする人がいない。高齢者福祉と違い、障がい者福祉はチェック機能が脆弱だと言える。
 生活保護の場合は、各区役所に請求書が届くが、実際に訪問したかどうか利用者には確認していない。いわば、企業の倫理観に委ねられている仕組みであり、これでは不正が起きてしまう。
 一方で、社長は「キャンセルのときに請求するのは、社員と利用者のためだ」と言う。確かに、利用者のキャンセルによって訪問に行かなければ、介護職員の賃金が支払われないこともある。支払われるとすれば、事業所が負担することになり、そのようなことが繰り返されれば、事業所は運営が困難になるだろう。
 また、この事業所は年末年始を休みにし、利用者を1週間放置しながら、報酬の架空請求をしている。放置された利用者は1週間風呂に入れず、ゴミも処理できず、人らしい生活ができていない。
 これは許されることではなく、不正も咎められるべき問題である。
 ただ、事業主を責め立てるだけでは問題は解決しない。架空請求で行政指導されている報道があるが、架空請求だけを問題にすることなく、起こってしまう仕組みの改善にも目を向けてもらいたいと思う。
 利用者の都合による訪問のキャンセルについても明確なルール作りが必要だ。それが、利用者や介護職で働く人、介護事業者を守り、「やさしい社会」をつくることにつながるのではと思う。
木村文貴子(神戸ワーカーズユニオン書記長)