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私の主張(2024年4月24日号)
高まる負担と流出する介護職員
強まる介護崩壊を食い止めよう
2024/04/24
■熟年者の強い熱意に押されて決意
猛暑も盛りの昨年8月、これまで敬老パス改悪や高齢者医療の窓口負担引上げ反対などを精力的に闘ってきた熟年者ユニオン(山粼貢会長)の80歳を迎えた先輩方の強い熱意に押され、私は介護保険改悪に反対する共同の取り組みを決意した。
一昨年秋から岸田政権が2024年度から予定する要介護1、2の総合事業への移行など介護保険改悪の7項目はガマンの限度を超えるものだった。政権は多くの介護業界団体からの反対により同年末に利用者2割負担の対象者拡大などの3項目に絞り込み、その他の改悪案は3年後に先送りした。
「介護崩壊」の危機を感じた熟年者ユニオンの呼びかけにより、安心ネットなど7団体で「史上最悪の介護保険改定に反対する兵庫の会」(以下、「兵庫の会」)が昨年10月6日、結成された。「兵庫の会」は、署名活動、パブコメ、厚労省への署名提出、神戸市会への陳情などに力を入れた。運動による最大の成果は、与党内からも反対の声が上がり、利用者2割負担の対象拡大の24年度導入を断念させたことである。
■高齢者の悲鳴、介護職員の疲弊と流出
署名の要請事項は、利用者の2割負担の対象拡大を行わないことなど3項目。「兵庫の会」は10月下旬から33か所で延べ293人の参加で街頭署名を展開した。賛同団体による署名と合わせた3755筆の署名は2月22日、大椿ゆうこ参議院議員の協力により参議院議員会館で厚労省に提出した。
消費税の倍増、保険料も倍増、そして1割から2割への利用者負担増は国民年金では払えないと街頭から力説した。署名活動では多くの高齢者から「物価高で苦しい暮らしにそんな負担はかなわない」「保険料を強制的に天引きされ、利用料が払えず介護サービスが使えないのはおかしい」など多くの悲鳴に近い声を耳にした。
ユニオンたるみが取り組む介護福祉ケアワーカー交流会では、グループホームで働く若い介護職員は「この3年間に一度も賃上げなし。月6回夜勤や8日連続勤務、人手不足による休日出勤など長時間勤務で年休など全く取れない」と疲れ果てた顔で「休みが欲しい」と語る。介護職員は賃上げや処遇改善が不十分なために時給の高い他の業界に流出し、その絶対数は昨年減少に転じた。厚労省の推定では25年度に介護職員が32万人不足する。
■陳情の形式的議論から議会改革を痛感
「兵庫の会」の山粼貢会長は3月19日、神戸市会福祉環境委員会で介護職員の実態調査、賃上げのための神戸市独自による財政支援などを陳情した。しかし、神戸市福祉局は、介護職員の処遇改善につながる人材確保育成を図る「コウベdeカイゴ」で対応するなど形式的な答弁に終始した。昨年の特養待機者数4481人の解消に向けた保険者である神戸市の責任を追及しても、何ら答弁がない。無責任にもほどがあると憤りを覚える。
つなぐ会派と共産党の委員が、陳情を後押しする質疑を行うが、自民、維新、公明、こうべ未来(民主系)は、不採択や打切りを表明するのみだ。真正面から市政を批判できる議員づくりが求められる。委員会では陳情について委員同士が活発に賛否の議論をすべきではないか。議会改革の必要性も痛感した。
■報酬減よる介護崩壊を止める力量を
24年度から介護報酬を1・59%引き上げると決めた厚労省は1月22日、多くの改悪案が先送りされた報復なのか、訪問介護のみ基本報酬を2・2%ほど引き下げるとした。その理由は、訪問介護の収益率が7・8%黒字という経営実態調査の結果であるが、収益率の高い大手介護事業所の回答が大半で、赤字の小規模事業所の回答があまり反映されていない不正確なものと言わねばならない。
介護現場には衝撃が走った。現場からは「在宅介護の終わりの始まり」との強い危機感が表明された。介護報酬の引き下げによる倒産や廃業が増え、訪問介護事業が先細りしていくことによって、介護難民や介護と仕事が両立できない介護離職者の急増を招くことが強く懸念される。介護離職を出さない取り組みは、労働運動の課題でもある。
ユニオンたるみでは介護現場の現実を把握するために訪問介護事業所回りを行っているが、「1月の報酬引き下げにより廃業を決めた。同窓会で仲間は旅行やゴルフに興じる話ばかり。自分は土日もあくせく働いている。心が折れた」という経営者の苦悩も聞こえ、足元から介護崩壊が始まっている。「兵庫の会」として、要介護高齢者やその家族、そして介護職員や介護施設・事業所の仲間とつながり、高齢者が安心して暮らせるよう政府や自治体に責任追及できる力量を培う取り組みと決意が必要であると考えている。
菊地憲之(史上最悪の介護保険改定に反対する兵庫の会・事務局長)
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猛暑も盛りの昨年8月、これまで敬老パス改悪や高齢者医療の窓口負担引上げ反対などを精力的に闘ってきた熟年者ユニオン(山粼貢会長)の80歳を迎えた先輩方の強い熱意に押され、私は介護保険改悪に反対する共同の取り組みを決意した。
一昨年秋から岸田政権が2024年度から予定する要介護1、2の総合事業への移行など介護保険改悪の7項目はガマンの限度を超えるものだった。政権は多くの介護業界団体からの反対により同年末に利用者2割負担の対象者拡大などの3項目に絞り込み、その他の改悪案は3年後に先送りした。
「介護崩壊」の危機を感じた熟年者ユニオンの呼びかけにより、安心ネットなど7団体で「史上最悪の介護保険改定に反対する兵庫の会」(以下、「兵庫の会」)が昨年10月6日、結成された。「兵庫の会」は、署名活動、パブコメ、厚労省への署名提出、神戸市会への陳情などに力を入れた。運動による最大の成果は、与党内からも反対の声が上がり、利用者2割負担の対象拡大の24年度導入を断念させたことである。
■高齢者の悲鳴、介護職員の疲弊と流出
署名の要請事項は、利用者の2割負担の対象拡大を行わないことなど3項目。「兵庫の会」は10月下旬から33か所で延べ293人の参加で街頭署名を展開した。賛同団体による署名と合わせた3755筆の署名は2月22日、大椿ゆうこ参議院議員の協力により参議院議員会館で厚労省に提出した。
消費税の倍増、保険料も倍増、そして1割から2割への利用者負担増は国民年金では払えないと街頭から力説した。署名活動では多くの高齢者から「物価高で苦しい暮らしにそんな負担はかなわない」「保険料を強制的に天引きされ、利用料が払えず介護サービスが使えないのはおかしい」など多くの悲鳴に近い声を耳にした。
ユニオンたるみが取り組む介護福祉ケアワーカー交流会では、グループホームで働く若い介護職員は「この3年間に一度も賃上げなし。月6回夜勤や8日連続勤務、人手不足による休日出勤など長時間勤務で年休など全く取れない」と疲れ果てた顔で「休みが欲しい」と語る。介護職員は賃上げや処遇改善が不十分なために時給の高い他の業界に流出し、その絶対数は昨年減少に転じた。厚労省の推定では25年度に介護職員が32万人不足する。
■陳情の形式的議論から議会改革を痛感
「兵庫の会」の山粼貢会長は3月19日、神戸市会福祉環境委員会で介護職員の実態調査、賃上げのための神戸市独自による財政支援などを陳情した。しかし、神戸市福祉局は、介護職員の処遇改善につながる人材確保育成を図る「コウベdeカイゴ」で対応するなど形式的な答弁に終始した。昨年の特養待機者数4481人の解消に向けた保険者である神戸市の責任を追及しても、何ら答弁がない。無責任にもほどがあると憤りを覚える。
つなぐ会派と共産党の委員が、陳情を後押しする質疑を行うが、自民、維新、公明、こうべ未来(民主系)は、不採択や打切りを表明するのみだ。真正面から市政を批判できる議員づくりが求められる。委員会では陳情について委員同士が活発に賛否の議論をすべきではないか。議会改革の必要性も痛感した。
■報酬減よる介護崩壊を止める力量を
24年度から介護報酬を1・59%引き上げると決めた厚労省は1月22日、多くの改悪案が先送りされた報復なのか、訪問介護のみ基本報酬を2・2%ほど引き下げるとした。その理由は、訪問介護の収益率が7・8%黒字という経営実態調査の結果であるが、収益率の高い大手介護事業所の回答が大半で、赤字の小規模事業所の回答があまり反映されていない不正確なものと言わねばならない。
介護現場には衝撃が走った。現場からは「在宅介護の終わりの始まり」との強い危機感が表明された。介護報酬の引き下げによる倒産や廃業が増え、訪問介護事業が先細りしていくことによって、介護難民や介護と仕事が両立できない介護離職者の急増を招くことが強く懸念される。介護離職を出さない取り組みは、労働運動の課題でもある。
ユニオンたるみでは介護現場の現実を把握するために訪問介護事業所回りを行っているが、「1月の報酬引き下げにより廃業を決めた。同窓会で仲間は旅行やゴルフに興じる話ばかり。自分は土日もあくせく働いている。心が折れた」という経営者の苦悩も聞こえ、足元から介護崩壊が始まっている。「兵庫の会」として、要介護高齢者やその家族、そして介護職員や介護施設・事業所の仲間とつながり、高齢者が安心して暮らせるよう政府や自治体に責任追及できる力量を培う取り組みと決意が必要であると考えている。