ひょうごミュージアム

ひょうご碑物語77
力水の碑(たつの市龍野町)

2024/04/24
相撲の始祖とされる野見宿禰を祀る神社内の浸き水は「力水」と呼ばれ碑に刻まれた字は第44代横綱栃錦の直筆

 たつの市には野見宿禰神社があり、相撲で歴史のある町である。大和朝廷の時代、出雲出身の野見宿禰が、向かう所敵なしと言われていた当麻蹴速を打ち破り、これが相撲の原点になったと言われている。
 野見宿禰は、大和国から出雲国に帰る途中、龍野で病死した。人々はその死を悲しみ、出雲からは多くの人が野見宿禰の墓を造るためにやってきて、川原から石を拾い、野に並んだ人が手渡しで運んだ。その野に立つ人々の姿から、この地は「立つ野」と呼ばれ、龍野の地名の由来になっているという。
 いまもなお野見宿禰は相撲で頂点を目指す人達には崇敬して止まない存在であり、明治から昭和にかけての大相撲の地方巡業では、華やかな幟が町中を彩り、常陸山、太刀山、栃錦、若乃花、朝潮、柏戸、大鵬、栃ノ海、佐田の山など大勢の力士が龍野を訪れ、野見宿禰神社に角道隆盛を祈願した。
 その参道の入り口付近の小さな力士像の横から「力水」と呼ばれる清らかな水が湧き出ており、傍の石に刻まれた「力水」の文字は第44代横綱栃錦の直筆である。
(森山)
【メモ】JR本竜野駅から西へ徒歩約30分。タクシーでは約10分。龍野神社境内から参道へ。マイカーでも無料駐車場有。