新社会兵庫ナウ

おんなの目(2020年6月9日号)

2020/06/16
日々雑感
 30年くらい乗り続けたバイクに乗るのを止めた。昨年、腰を痛め、検査の結果、骨粗鬆症による腰椎圧迫骨折と言われたからだ。「また乗りたくなるかもしれないから売らない方がいいよ」とか「この際だからもう乗るのを止めたら」とかいろいろ言われ、しばらくは駐輪場に置いていたのだが、乗らなくなったバイクを見るたびに何となく心がざわつくので「ああ未練だ」とお世話になっていたバイク屋さんに取りに来てもらった。
 これまで通勤も、買い物も、新聞の配達も……移動は何でもバイクだった。愛着や思い出もたくさんある。通勤は最寄りの駅まで乗っていたが、震災の時は山の上の方にある職場まで乗って行ったので、「乗っている時、後ろからすごい煙が出ているよ。大丈夫?」と心配された。大雨の日には顔も手もずぶぬれになる。信号待ちをしていた時、横に高級車が止まり綺麗な女性が優雅に運転席にいるのを見た時、自分が惨めで、悔しいと感じたことも懐かしい思い出だ。
 今は時間もあるのでなるべく歩くことにしている。独特の雰囲気のある木や何とも可愛い花に出会って、本で調べて名前がわかったり、手作りふうのかわいいマスコットをリュックに付けて歩いている人を見て、つい声をかけたり……。歩くこともなかなかおもしろいと思ったりしている。
 さて、爆発的感染が心配されたコロナも日本では一時的であれ、収束の方向に向かっているようだが、これから世の中が大きく変わると言われている。情報手段の乏しい私には、一体どのような社会がやって来るのかイメージできない。「オンライン○○」が重宝され、AIが急速に広がる。そしてすべてのプライバシーが権力に握られる等々。
 少し前、「サンデーモーニング」で田中優子さんが「こんな時こそひとりひとりが知性をもって強くなることが必要。情報が何に利用されようとしているのかを常に見ておくことが求められている」と言われていた。また、ホームレス支援ネットワークの山田さんは「人間は『貧すれば鈍する』ではありません。『貧すれば考える』ですよ。きっと新しい時代がやってきますよ」ととても明るかった。釜ヶ崎のホームレスの人たちを身近でずっと見てきた人からのこの言葉は重く響いた。検察庁法「改正」案についても、検察OBの人達が高齢を押して抗議文を出したり、今まで「政治的発言をするな」と言われていた芸能人が次々と声を上げたりなど、おかしいと心から思った時、人は声を上げたり行動したりするのだと感じて嬉しかった。
 情報の乏しい私には、「知性をもって強くなること」にも「情報が何に利用されようとしているのかを常に見ておくこと」にも自信がない。でもこの間、社会のいろいろな場で、すばらしい能力を発揮したり地道に活動を続けたりしている人にあらためて気づかされた。この人たちに希望をつなぎたい。「人間としての尊厳が大事にされる社会」を心から願っている。
(C・T)