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阪神・淡路大震災から25年。まだ残る復興の課題

2020/01/11
神戸で震災と石綿を考えるシンポ開催
 6434人が亡くなった阪神・淡路大震災から1月17日で25年。ひとつの節目となる四半世紀を過ぎた今も、震災は終わったとは言えない重大な課題が残されている。借り上げ復興住宅に入居した人たちには行政側の20年という借り上げ契約期限を理由とした退去が迫る。神戸市と西宮市は引っ越しができない入居者を提訴してまで退去の強制を迫っている現実がある。いまひとつは、震災アスベスト被害の拡大という脅威だ。すでに6人が亡くなっているが、長い潜伏期間を経て発症する時期に直面している。
  こうした課題を受け、「震災とアスベスト実行委員会」(事務局・NPO法人ひょうご労働安全衛生センター)が主催する「震災とアスベストを考えるシンポジウム」が1月11日午後、神戸市勤労会館で開かれた。全国からもアスベスト患者やその家族会の参加があり、支援者、労働団体も含む約230人の参加で会場は満杯となった。
 シンポジウムでは主催者あいさつののち、「阪神・淡路大震災におけるアスベスト飛散の検証」と題する記念講演が中地重晴・熊本学園大学教授によって行われた。震災当時、神戸市内で現地調査に携わった中地さんからは、大気中のアスベストの数値が全国平均より非常に高かったことなどが具体的な数値をもとに報告され、「短期間の吸引であっても被害者を補償すべきだ」と訴えた。
 企画の2つ目として、「震災アスベスト・クロスロードゲーム」が行われた。「アスベストが含まれたスレートを手で割るか」「マスクなしで瓦礫の処理を行うか」「震災後、自宅待機するか出勤するか」「築40年の自宅を200万円かけて耐震化するか」などの質問に、YES・NOカードで答えるというもの。正解はないが、それぞれにその理由を語ることで意見を交わすことになり防災などへの理解を深めた。
 さらに、「地震・石綿・マスク支援プロジェクト」の紹介や防じんマスクの装着方法の実演もあった。
 シンポジウムの最後には、「阪神・淡路大震災から25年 飛散アスベストによる健康被害を抑制するために」とした声明を確認した。声明では、「阪神・淡路大震災で飛散したアスベストによる健康被害や、来るべき大震災に備え、次のような取り組みを提起したい」として、◎災害時のアスベスト飛散の危険性、対策の必要性を周知し、自らの命・健康を守る「市民力」の向上を図る、◎阪神・淡路大震災当時の被災地に居住歴があり、悪性中皮腫等のアスベスト関連疾患を発症した人の追跡調査など、11項目にわたる取り組みがあげられている。
 この「声明」は、1月17日の震災の日に兵庫県や神戸市などに提出された。
(小林)
写真:(左)主催者を代表してひょうご労働安全衛生センター理事長の小西達也医師があいさつ=1月11日、神戸市勤労会館、(右)シンポでは震災アスベスト・クロスロードゲームも行った=1月11日、神戸市中央区