ひょうごミュージアム

ひょうご描き歩き148
新戸倉トンネル(宍粟市波賀町)

2024/03/13
 国道29号(因幡街道)を北上し、引原ダムを過ぎると程なく鳥取県との県境の戸倉峠(標高891m)に突き当たる。戸倉峠は兵庫の屋根・氷ノ山(1464m)の山麓に連なり、分水嶺をもち、揖保川水系の源流をなす。
 この峠を貫く県境のトンネル「新戸倉トンネル」(全長1730m、幅員8m)が開通して30年ほどになる。「新」ができるまでの旧トンネル「戸倉隧道」の頃は幅が狭く、暗く、通り抜けた時、「国境の長いトンネルを抜けると雪国だった」の感慨よりも、異界から脱出できたような安堵を感じたことを想起する。その「旧」は「新」の手前で左に折れ入り、くねくねと細くなった道を進んだ先に入り口はあるが、今は鉄扉と金網で固く閉鎖されていて中には入れない。
 もう一つ、この峠には掘削途中で打っ遣られたトンネル跡が鳥取側に残っている。戦時下の1942年に陸軍が本土決戦に備えて極秘に開削を進めたもので、2年後、鳥取側から導坑約400m掘り進んだあたりで工事は中止となってその跡が残る。このトンネル工事については詳しく判っていない。
 戸倉峠にかかる赤谷山(1216m)の頂上からの氷ノ山、三室山の眺めは素晴らしい。
(嶋谷)