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医療現場 医療崩壊の危機が切迫
過酷な医療現場の実情

2020/05/26
 関西の「感染症指定医療機関」に指定されている公立病院で看護師として働くAさんに、新型コロナウイルス(以下、「新型コロナ」)感染者が増えてきた3月上旬からの労働環境や病院の状況について語ってもらった(4月19日)。
【編集部】
 
病院は新型コロナ体制
 私自身の所属は新型コロナ患者を受け入れる病棟とは異なるので、一般的な感染防止対策をする他は、少し前まで働く環境に変化はなかったが、病院全体が新型コロナ体制に移っていく中で、3人夜勤から2人夜勤に変わった。集中治療室に看護師が異動になったからだ。
 私の病院にはもともと感染症の病床があるが、それで足りる訳でもなく、他の診療科の30病床を置き換えて対応している。病床と同時に、看護師も専属で病棟に配属される。新型コロナ患者に対する看護師の配置基準は集中治療室で従来の1・5倍で、人手不足は院内に加えて他の系列の病院から応援に来てもらっている。

過酷な勤務状況
 新型コロナ緊急外来の看護師からはいくつもの大変な状況を聞いている。

 まず、①マスク、ガウンの不足だ。マスクは1人週2枚しか使えない(4月19日当時)。
 ②CTは新型コロナも一般の検査でもみな同じものを使うが、使うごとに消毒し清掃する必要がある。新型コロナ病棟の中の備品の補充や掃除は特に気を使うが、それらはすべて看護師が行っており、労働密度が増している。
 ③緊急外来受け入れの窓口は危険な仕事であるのに、特殊勤務手当が1日300円しか出ていない。その後、労組からの要求などで3千円への引き上げが決まった。
 ④自分自身の感染や家族に感染させる不安、風評被害などもある。

 風評被害については、私自身も知人から「あの病院で働いていると言わない方がいい」とか、冗談で「Aさんが外食に行った後はアルコールで拭き回らないとね」と何度か言われた。自分自身も、もし新型コロナ病棟に異動になったら、もう人には会えなくなると一瞬頭をよぎり、自分の中にも差別はあると感じている。厄介な問題である。

医療崩壊は真に危機的
 幸い今は、私の病院で院内感染・医療崩壊は起きていないが、真に危機的だ。この20年間の厚労省による病床削減・病院の統廃合で、感染症への体制以前に一般病棟の人員も恒常的に不足していたので、さらに感染が拡大すれば、病院はますます一般の患者を後回しにして新型コロナに対応せざるを得なくなるし、一般病棟で1人でも感染者が出れば、その病棟は閉鎖になる。これまで自治体が小さな病院をつぶしてきた結果、地域の小児医療や、3次救急(24時間体制で重症や重篤患者に対して行う医療)も一手に担っている大病院の当病院がマヒしたらどうなるのか非常に不安だ。
 他にも、風評被害で外来患者が激減したことなどによる収益減や、今年はちゃんと採用試験が行われ新入看護師が入ってくるのかなど、不安なことは尽きない。
 ただ、今は一刻も早く軽症者の方のホテル待機などが進み病院の負担が減ること、スタッフが安心して安全に働ける環境が整うことを願っている。
公立病院看護師・A