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学校現場 奪われ続ける学ぶ権利
学習環境による格差拡大の懸念

2020/05/26
休校から2ヵ月半が過ぎてもいまだに校庭には生徒の姿が戻っていない

公立小中学校では
 神戸市では3月3日から、1、2日登校しただけで、休校が続く。突然の一斉休校に学校現場ではとりあえず自宅学習の資料作りに追われた。何とか卒業式だけはやりたい、と式場を作り子どもたちを送り出した。4月からの開校を、と準備を進めたが入学式も始業式もできなかった。せめて入学説明会をという願いも、4月7日の緊急事態宣言で急きょ中止になった。個別に教科書と課題を渡し、連休明けまでの2か月間、家庭学習となった。一方で、家庭でみることのできない小学生は各校で10数人が登校し、自習している。学童保育所は制限が付きつつも開所している。4月8日時点では、分散登校を試行したが、それは一度だけで、次の週には家庭訪問をと準備したが、それもストップがかかった。工夫して作った課題も回収ができない。学童保育や学校での預かりも当初より人数が制限されてきた。
 教職員は、新年度準備と課題作りの後は、ローテーションを組み出勤。その後は在宅勤務で、後日報告書を提出する。再任用教員や非常勤職員も同じ扱いだ。ただ、民間委託した給食調理士は給与の扱いは不明だが自宅待機のようだ。在宅勤務でパソコンを持ち帰り仕事をしているので、サーバーがパンク状態。スカイプは使用禁止になった。
 その後、緊急事態宣言の延長の動きの中で、県や神戸市などは早々と5月31日まで休校と決めた。週に1日か2日の分散登校、動画配信で授業を進めるなどの動きが進んでいる。子どもたちがどのように学習するか、また支援指導をどうするか模索が続いている。
 一方で多くの学習塾は個別指導と同時に、パソコンやタブレット、Wi−Fi環境を整えることでのオンライン授業を進め出した。ある保護者は1か月2万5千円の塾の費用に、機器購入と環境整備に1人10万円もらっても足りない、とこぼしている。
 2か月の間にも、子どもたちの学習状況と学習の習慣には大きな格差が広がっている。
 
県立高校では
 4月8日の始業式、入学式の1日だけ「登校すべき日」とし、9日からは臨時休校のため出席簿もつけない。学区によっては休校しないと言っていたが、すぐに修正。教科書は事前に購入し、ワークブックやプリントなどを使い自学自習となり、広い校区で家庭訪問も難しく、課題を郵送するため生徒1人当たり800円の予算がついたという。リクルートとベネッセのオンライン学習を利用することが認められ、料金は県が負担するというが、普段は携帯持ち込み禁止が多く、生徒側にネット受信環境があるかどうかも問題になる。普通科の進学校は利用するところが多く、ここでも格差が広がる。
 また、職員側にも、会議を5月6日まで開催しないようにという要請がある。三密禁止という中で、4月当初は窓を開け、防寒着を着て震えながら会議をしたという所も多い。在宅勤務を進めるようにという要請もあり、長期休暇中のように自宅研修が認められ、非常勤講師(時間講師)にも在宅の研修制度は認められている(交通費は無し)。
 部活動は禁止。総体中止が決まり、文化部の大会も中止という中で、例年夏休みに予定されているインターンシップや就職試験も、秋からの入試もどうなるか見通せない。

9月入学問題の浮上
 ここにきて突然、9月入学説が学力の格差拡大を防ぐためにも有効と言われだした。しかし、混乱に乗じてこのような改革を進めることには疑問がある。就職や入試制度との関係など課題も多い。何よりいま学ぶ場所がない、居場所のない子どもたちの学習権、生存権をどう保障するのかに応えていない。
 学校の全面的な再開には、緊急事態宣言の解除が必要だという。しかし、感染防止のための「三密」対策と消毒、マスクの確保を進め、感染の有無を確認する検査体制と子どもたちへの医療を保証する仕組みを前提として、部分的にでも学習の場と居場所づくりを始めてほしいと願う。
教育労働運動研究会・小城
 
(学校の再開はいつ? どうすればいいのか?)