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寄稿
進んでほしい「ユニバーサルツーリズム」

2024/01/21
【写真説明】神戸ユニバーサルツーリズムセンターHPより

門前喜康(NPO法人「日本ユニバーサルツーリズム推進ネットワーク」会員、一般社団法人理事)

 兵庫県では、2023年の春、ユニバーサルツーリズムに特化した条例としては全国初となる「高齢者、障害者等が円滑に旅行することができる環境の整備に関する条例」(通称・ユニバーサルツーリズム推進条例)が公布された。具体的には、高齢者や障がいのある人の旅先での宿泊や移動、入浴、排せつ、食事などの課題・問題をその地域の宿泊施設、交通業界、福祉事業所などのネットワークで解決しようというもの。
 この旅行者としての高齢者や障がい者が旅先で抱えるさまざまな問題解決のために各関係機関をつないでコーディネートするのが、いま全国・兵庫県内各地にできつつある「ユニバーサルツーリズムセンター」である。
 例えば、神戸ユニバーサルツーリズムセンターの実際の流れはつぎのようになる。各地のユニバーサルツーリズムセンターが利用者のさまざまな状態や要望の聞き取りを行い、その情報をもとに関係機関・施設事業所などへ必要な支援サービスを伝える。そのメニューを利用者にフィードバックして、センターと連携する旅行会社と協力し旅行が実施される。
 これまでの高齢者や障がいのある方をサポートする旅行は、出発地から介助者が付き添っていく場合がほとんどであった。これだと、同行する介助者の費用の問題や旅行中つねに介助者が一緒に居ることでのプライバシーの問題もある。
 ユニバーサルツーリズムでは、介助のすべてを旅行先のネットワークで解決するので、介助が必要な内容、必要な時間だけサービスを受ければよい。そして、介助する側が旅先の人であるので、その町の情報も豊富で快適な旅ができる。
 さらにこのメリットは旅人に留まらない。ユニバーサルツーリズムで構築されるネットワークはその町にとっても有益だ。高齢者や障がい者が訪れたい安心、安全な町は、誰もが住みやすい町になっていく。ユニバーサルツーリズムでできたネットワークは、その町の人たちのこれまでになかったコミュニケーションを生む。そのことは防災・減災への意識の向上にもつながっていく。「兵庫五国」には、様々な観光資源がある。その「観光」の魅力をユニバーサルな視点で考え再構築することは、豊かな町づくりにもつながっていく。
 超高齢社会を迎える私たちにとってこの取り組みは有意義である。全国に先駆けて公布した「ユニバーサルツーリズム推進条例」を真に実のあるものにしていくことが、いま問われている。