新社会兵庫ナウ

地域ユニオンあちこちあれこれ424
最低賃金制悪用の低賃金

2023/12/27
 いま流行の家事代行サービスのB社と交渉している。組合員はB社と労働契約を結び、垂水区にある有料老人ホームの入居者の部屋掃除をしている。老人ホームとB社が業務委託契約をしているが、実際には老人ホームから指揮命令を受けることがあり、老人ホームはB社から委託されている人数分だけ支払うため違法派遣状態と思われる。
 問題になったのは、10月1日の最低賃金の引き上げだった。家事代行サービスは、通常は依頼があった一般家庭に出向きサービスを行うが、組合員は老人ホーム専属という契約のため一般家庭に行くことはない。B社は最低賃金の引き上げに伴い、時間給の引き上げを通知した。ところが、老人ホームで専属契約をしている組合員らは引き上げの対象にならないと通知された。
 老人ホーム専属は人数が少ないため、一般家庭に行くことを前提として労働契約しているパートも老人ホームで業務を行う。専属スタッフの方が経験もスキルも高いが、時間給は専属スタッフが50円低くなる。
 第1回の交渉で、B社は「労働条件通知書の賃金の欄に『契約期間中に地域別最低賃金が上昇した場合はその額に変更することがある』と記載があるから、最低賃金を下回るまで時間給を変更しない」「時間給を引き上げる考えはない」と回答。会社に「家事代行業務は最低賃金の仕事だと考えているのか」と問うと、「そうだ」と答えた。
 家事代行は最低賃金でできるような仕事ではない。とくに老人ホームでの家事代行は毎日顔を合わせるため入居者との関係も構築しなければならず、気を遣うことが多い。
 家事代行業者が家事代行を軽んじる発言も腹立たしい。家事代行は女性がすき間時間を利用してパートで働くこともあり、女性の労働を軽視している。
 そして問題は、最低賃金を下回なければ法律には違反してないと思っていることだ。最低賃金の引き上げは必要だが、最低賃金の意味も広めていくことも必要である。
木村文貴子(神戸ワーカーズユニオン書記長)