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借上公営住宅「追い出し」問題
訴訟取り下げ転居斡旋凍結を
市民団体が神戸市長に要請

2020/05/26
 阪神・淡路大震災の際の借上公営住宅(自治体が民間住宅を借上げ、復興公営住宅として被災者に又貸しし、民間住宅の家賃と入居者が払う公営住宅並みの家賃との差額を国と自治体で負担)をめぐって、神戸市が「第2次市営住宅マネジメント計画」(2010年)で、会計健全化のため市営住宅の管理戸数を減らそうと、20年の借上期間満了までに被災者を「追い出し」する政策に方針転換したことが、この間、問題になっている。
 借上公営住宅入居者によって、入居時期や入居許可書の記載事項に違いがある。そのため、神戸市から提訴された入居者は審理が分かれている。しかし、現在(2020年3月末)まで出されているどの判決においても、主な争点は、公営住宅法第25条2項が要求する通知についてである。入居者側弁護団は「事業主体の長は、借上げに係る公営住宅の入居者を決定したときは、当該入居者に対し、当該公営住宅の借上げの期間の満了時に当該公営住宅を明け渡さなければならない旨を通知しなければならない」(公営住宅法第25条2項)にしたがった事前の通知をしていないために明渡しを請求できないと主張している。
 これに対して、神戸市は、公営住宅法第32条が「公営住宅の借上げの期間が満了するとき」(同条第1項6号)に入居者に対して公営住宅の明渡しを請求できると定めていることとともに、先の事前通知がこの明渡し請求の要件ではないことを主張しており、これまでの判決では神戸市の主張が認められている。
 今年年4月21日、「一人ひとりが大切にされる災害復興法をつくる会」と兵庫県震災復興研究センターより、「『借上公営住宅』問題の解決を求める緊急要請書」が神戸市長宛に提出された。
現在、神戸市から退去を求められ裁判になっているのは9世帯であるが、いずれの入居者も裁判で被告とされたショックからか、心身の不調が著しく亢進している。
 一方で神戸市は、この度の新型コロナウイルス感染症等の影響で住宅困窮者となった市民に、市営住宅を提供している。行政は、苦境に立たされている人や心身の衰えた人がいれば、どのような立場であろうともまず救済しなければならない。このような情勢下で「追い出し」をすることは許されない。
 そこで、前述の要請書では、①神戸市長は訴訟を取り下げ、入居者の居住の保障を、 ②「借上公営住宅」の転居斡旋事業は当分の間凍結を、の2点を要請し、誠意ある回答を求めている。(関本英恵)