改憲の動きをウオッチング

(2023年11月22日号)

2023/11/22
■「任期中の改憲実現」繰り返す岸田首相
  11月3日、憲法公布77年を迎えた。憲法前文は「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにする」と謳い、この決意をうけ、9条は戦争放棄とそれを確実なものとするため戦力の不保持と交戦権の否認を規定した。公布77年、改めて心に刻み込もう。
 こともあろうに岸田首相(総裁)は、国会の場で、記者会見で、「任期中の改憲実現」を繰り返し明言。「国会発議に向け、条文案の具体化など、より積極的な議論が行われることを期待する」とまで踏み込みこんだ。首相が改憲議論の旗を振ることは憲法99条を踏みにじるものである。
 改憲の国民投票は、国会発議から60日〜180日の周知期間を設けることになっている。2024年9月までの改憲を実現するためには、今臨時国会で改憲案をまとめ、おそくとも来年の通常国会で発議を行う必要がある。2024年9月までの総裁任期中の改憲実現は日程的にもかなり無理があろう。立憲野党の憲法審査会などにおける抵抗や院外の大衆運動で阻むことは十分できる。
 衆院憲法審査会は11月2日、今国会で初めて開かれたが幹事選任など1分足らずで終わっている。11月9日に2回目が予定されるが、内容は海外視察の報告にとどまると言われている。12月13日の会期末までに審査会が開けるのは、11月23日の定例日が祝日のため残り3回だけ。参院憲法審のほうは初回の日程すら決まっていない(11月7日現在)。
■ここまできた「戦争への準備」 自衛隊「戦死者」の遺体取り扱い訓練  詳細は公表せず
 政府は対中国を念頭に南西諸島の軍事力を強化している。2016年の与那国島を手始めに、陸上自衛隊駐屯地が各地に開設され、奄美大島、宮古島、石垣島にミサイル部隊が配備された。
 その南西諸島で有事の際、沖縄の地方紙「琉球新報」によると、自衛隊が南西地域で死者が出る激しい戦闘を想定して戦死した隊員(戦死者)の遺体を取り扱う訓練を県内で計画し、対外的に公表しないまま実施しようとしていることが、複数の関係者の話で分かった(10月29日付号)。
  同紙は「訓練を公表せず国民には犠牲を伴う戦争のリスクを見せないようにする姿勢が表れている」と指摘。識者からは「国民に説明すべきだ」などの批判がでている。
 吉田統合幕僚長は11月2日の記者会見で、11月10日から始まる最大規模の実動演習「自衛隊統合演習」で計画する戦死隊員の遺体取り扱い訓練について問われたが、回答を避けた。
 有事になれば米軍基地が集中している沖縄が真っ先に攻撃され戦場となる。戦争に反対する全県組織「沖縄を再び戦場にさせない県民の会」は11月23日、那覇市内で1万人規模の「県民大会」を開催する。
  「県民大会」に先立ち、県民の会の代表らが米軍基地がある東京や神奈川などを訪れて、「これは本土の問題だ」と訴えた。
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