新社会兵庫ナウ

私の主張(2020年5月19日号)

2020/05/26
コロナで失業・解雇急増必死
       こんな時こそ寄り添う努力を


労働相談内容が深刻化
 NPO法人ひょうご働く人の相談室では、3月初旬からひょうごユニオン等と労働相談に取り組み、これまでに約200件の相談を受けてきたが、3月末までと4月に入って以降とでは相談内容に大きな違いが出てきた。
 この問題では、貧困と格差の構造を反映して非正規労働者やフリーランスの相談が圧倒的に多いのが1つの特徴だが、正規労働者の割合が6%から25%に増えてきた。また、学校休業に関する相談は14%から3%に減ったのに対して、休業や解雇等、会社都合によるリストラの割合が23%から50%へと倍増している。4月以降、あらゆる業種で事業縮小・休止が広がり、従業員の休業、解雇など本格的にリストラへと拡大していることを示しており、いよいよ熾烈な「コロナリストラ」が始まったということだ。
 
県内でも広がる「コロナリストラ」
 4月8日、東京のロイヤルリムジンタクシーの「全社員600人解雇」のニュースが駆け巡ったが、兵庫県内のタクシー業界でも4月7日の緊急事態宣言直後から休止や希望退職・休業が相次いでいる。
 ユニオン運動で私が関わる2つのタクシー会社の1つでは、4月13日に従業員に対して、①継続勤務、②休業、③希望退職の3つの選択肢を迫り、稼働を1/3に減らす休業に入った。その結果約1/3の仲間が職場を去ることになった。もう1社も同様に、4月25日から稼働を1/3にする休業に入った。
 タクシーの売り上げは2月頃から徐々に減少し、3月には30%〜40%減少、4月に入って半減し、緊急事態宣言後は一気に2割〜3割程度にまで落ち込んでいる。この傾向は飲食や食料品を除く小売り等の幅広い業種で同様であり、同じ雇用問題が急速に拡大していると考えられる。
 
一刻も早く生活支援を
 厚生労働省の資料によれば、特別労働相談窓口に寄せられた相談は4月23日までに約20万件で、そのうち雇用調整助成金や休業に関するものが約8割を占めている。しかし、4月24日までに申請があったのはわずか2500件で、さらに支給決定したのは280件に過ぎないというのが現状だという。
 仕事を失う人が多数出ようとしている今、一番急がれるのは紛れもなく雇用確保と生活保障の具体化である。「コロナリストラ」の歩みは確実で、範囲が広く且つ内容は深刻、そしてとてもスピードが速いが、行政の支援策はまったく追いついていない。それどころか、政府の対策が後手に回り迷走していることが、行政の窓口に大きな混乱を生み出し、支援策の遅延に繋がっている。
 雇用調整助成金制度についても、雇用保険についても、金額を引き上げ、労働者がすみやかにお金を受け取ることができる、生活支援の実効性と継続性のある制度への抜本的な見直しが必要だ。国が一刻も早くすべての労働者と中小零細事業者の生活安定につながるきめ細かい手立てを打つように求めたい。 
 
こんな時こそ寄り添い、つながる努力
 一方、一気に大量の失業者が生み出されようとしている時、労働者の運動はどうなっているかに目を向けると心もとない限りだ。コロナ感染防止のために人と人の接触を減らすことが必要なため、仲間が集うこと自体が難しく、私たちの活動にとっての大きな障壁となっている。労働組合の会議や集会はほとんど中止され、NPO等の支援活動も縮小を余儀なくされ、社会運動は事実上機能不全に陥りつつあると言って良い。
 しかし、「見えない共通の敵に対するたたかい」と言われるが、被害は共通ではなく、より痛みを受けるのは弱者であることは明白だ。ただ息をひそめて嵐の過ぎ去るのを待つようなことをしていいはずがない。
 やられっ放しのように見える先の2つのタクシー分会であるが、実は、「やっぱり労働組合を作っておいて良かった」という声があがり、「こんな時こそ組合員を増やそう」と組合員を増やしている。あかし地域ユニオンでは、組合員を激励するために手作りマスクを作って届けるというささやかな活動をしたが大変好評をいただいた。私たちには、安易なムードに流されず、コロナショックの特性を踏まえながら、知恵を出し合い、労働者に寄り添い、つながり、組織するしなやかさこそが求められているのではないか。
山西伸史(NPO法人ひょうご働く人の相談室・事務局長)