改憲の動きをウオッチング

2020年4月28日号

2020/04/28
■断じて許すな! 新型コロナ便乗型改憲―緊急事態条項
 新型コロナウイルスが猛威を振るっている最中にも、安倍・自民党の改憲策動が強まっている。緊急事態に便乗し、緊急事態条項を含む改憲の動きがまたぞろ出てきた。
 自民党の重鎮である伊吹・元衆院議長は、派閥の会合で「緊急事態の1つの例。憲法改正の大きな実験台と考えた方がいいかもしれない」(東京)と発言した(1月30日)。
 さらにその翌日、下村・選対委員長(前改憲推進本部長)も「人権も大事だが、公共の福祉も大事だ。(国会での改憲)議論のきっかけにすべきではないか」(日経)と講演で述べた。新型コロナウイルス対策に便乗して憲法に緊急事態条項創設を主張することは、国民の支持を得られやすいと判断してのことだろう。
 また、改正新型インフルエンザ等対策特別措置法(新型コロナウイルス特措法)の発令に先立って開かれた衆院議院運営委員会の質疑で、国民生活への国の強制力を強くするためには「憲法改正による緊急事態条項の創設が不可欠だ」と指摘され、安倍首相は、憲法改正による緊急事態条項の創設は「極めて重く大切な課題だ」と強調し、憲法審査会での改憲論議を呼びかけた(日本維新の会の遠藤議員への答弁)。
 さらに自民党は4月10日、憲法改正推進本部を開き、緊急事態条項明記の意義と国会での改憲論議の加速を確認した。
 しかし、野党は「究極の火事場泥棒ではないか」と猛反発しており、自民党の憲法審査会の開催要求を拒否している。
 自民党の改憲案の中で緊急事態条項が初めて出てくるのは、2012年の「日本国憲法改正草案」である。
 内閣総理大臣は、外部からの武力攻撃、内乱、地震などによる大規模な自然災害などの緊急事態において緊急事態の宣言を発することができる(98条)、緊急事態宣言が発せられたときは「内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができる」(99条1項)、「国会の事後承認」(同2項)、「何人も、国その他公の機関の指示に従わなければならない」(同3項)。2条から構成されており、政府に立法権を与え、国会審議ぬきに法律を制定できる。
 ワイマール憲法が骨抜きにされ、ヒトラーが短期間で独裁政権を誕生させた背景は、立法権を政府に与える「授権法(全権委任法)」の乱用である。前述の自民党の改憲草案と「そっくり」である。麻生太郎副総理は、「ナチスの手口に学んだらどうか」と言い放っている。
 現在の改憲4項目の1つである緊急事態条項は、前述の12年改憲草案を踏まえつつも、この内容では国民の支持を得られないということか、かなりトーンダウンしている。とは言え、政令という名で法律同等の「内閣緊急令」を盛り込んでいる。
 今回の緊急事態宣言は改正新型インフルエンザ等特措法という個別の法律に基づくものだが、憲法上も人権制約ができるということになる。
 新型コロナウイルス対策を、緊急事態条項創設の予行演習とするような安倍内閣を退陣に追い込もう。(中)