ひょうごミュージアム

ひょうご描き歩き143
大塩の水門(姫路市大塩町)

2023/09/27
 かつてこの辺りから西の播磨灘の海岸にいくつもの塩田が広がっていた。学生の頃、大塩辺りで通学の車窓に塩田が広がっていたのを思い出す。海水を塩浜に送り込んで砂に塩の結晶が付くようにした入浜式塩田であったものが、その頃にはゆるい傾斜を付けた盤の上に海水を流し枝条架でかん水をつくる流下式の製法に変わっていた。柴竹が逆さに吊るされた枝条架が砂浜に並び立ち、塩の香りが車窓から入ってくる塩田風景であった。その塩田もはるか過去に姿を消し、画の水門のかかる入江の両側には塩田跡を利用したゴルフ場が広がり、その傍に大学が進出してきて塩田の町は大きく様変わりしてきている。播州路の秋祭りを代表する一つである毛獅子の舞で有名な大塩天満宮は、山電・大塩駅の北側に在った社殿を南側に移して在る。西隣の的形、白浜の砂浜も潮干狩りや海水浴場として賑わってきた。
 私の住む高砂もかつて白砂青松の遠浅の海岸が広がっていて、夏にはその浜辺まで焼けた砂道を歩いて行ったものだった。今や潮風は化学臭に変わり、砂浜は失われ、工場群が海岸線を占領していて海辺に近づけない。「古代、海は万民のもの」と宣言したかつての入浜権運動に想いを馳せる。
(嶋谷)