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ひょうご描き歩き
千苅ダム(神戸市北区道場町)

2023/05/25
 JR宝塚線の道場駅から歩いて20分あまり、大岩岳(384m)登山の時、その登り口にこの魅力的な千苅(せんがり)ダムがあった。神戸市に水道水を送るために、布引五本松ダム、烏原立ケ畑ダムに続く3番目のダムとして造られ、100年を越えて今もしっかりとその役目を果たしている。
この貯水池は武庫川水系羽束(はつか)川、波豆(はず)川を水源とし、ダムを流下した水は武庫川へと流れ込む。このダムの所在地は神戸市北区になるが、ダム湖の北側部分は三田市や宝塚市にまたがる。堤高42m、堤長106mの重力式コンクリートダムで、堤頂に並ぶ17門のスライドゲートは日本最古。
 訪れた時はちょうど放流されていて、17門の放水口から流れ出た水が石張りの堤体斜面を白く波立たせて流れ落ちる様は圧倒的に美しい。その流下する水のカーテンの手前に架かるアーチ型の送水管も趣きを添えている。
 国の登録有形文化財に指定されていて、土木学会が選定する日本の近代土木遺産で現存する重要な土木構造物にも選ばれている。
 このダム敷地内には多くの枝垂桜などが植樹されていて、桜の開花時期に合わせて千苅さくら祭が催される。このダム建造で波豆集落の22戸が水没の憂き目に遭った。(嶋谷)